2012 年 55 巻 5 号 p. 285-290
今回比較的稀な副鼻腔転移を契機に発見された腎細胞癌の1例を経験したので報告する。
症例は64歳男性。主訴は左眼周囲および両側下肢のしびれ,胸痛であった。視診にて鼻内に腫瘍性病変を認め,また副鼻腔CTでは左前頭洞から篩骨洞および眼窩内側壁へ及ぶ骨破壊を伴う腫瘍性病変を認めた。さらに胸部CTでは転移と考えられる右肺小結節および第5胸椎の破壊を同時に認めたため,悪性腫瘍を疑い局所麻酔下にて副鼻腔腫瘍生検を施行した。また生検後,全身検索のために施行した腹部CTにて左腎に原発巣と考えられる45mm大の腫瘍性病変を認め,左腎摘出術施行となった。病理検査ではどちらも淡明細胞癌と診断されたため最終的に腎細胞癌の副鼻腔転移と確定診断した。
副鼻腔腫瘍を認めた際には腎細胞癌を始めとする転移性悪性腫瘍であることも念頭に置き,全身検索が必要と考える。また腎細胞癌による副鼻腔転移は過去の報告をみても症状として鼻出血が最多であり,そのコントロールに難渋することが多い。ゆえに腫瘍を摘出し出血のコントロールを行うことにより患者のQOLが向上すると考えられ,積極的に外科的治療を検討することが重要である。