耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
臨床
当科における鼻副鼻腔内反性乳頭腫 T3 症例の検討
高林 宏輔長峯 正泰藤田 豪紀
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 64 巻 4 号 p. 209-215

詳細
抄録

 目的: 鼻副鼻腔内反性乳頭腫の治療成績は内視鏡下鼻副鼻腔手術の発達により向上してきたが, 再発率は未だに10%を超える。 良性腫瘍といえども悪性病変の合併を考慮する必要があるため正確な術前診断と手術による完全摘出が求められる。 手術治療は, 分割切除と一塊切除それぞれに利点欠点があるため定まった手法はない。 本研究の目的は当科で手術治療を行った鼻副鼻腔内反性乳頭腫症例の治療成績を示し, 内視鏡手術の有用性を検討することである。

 方法: 2015年1月から2020年3月までの期間に当科で手術治療を行った鼻副鼻腔内反性乳頭腫で Krouse の進展度分類における T3 症例に対して分割切除例と一塊切除例をレトロスペクティブに比較検討した。

 結果: 全15症例が経鼻内視鏡下に摘出可能であり, 経過観察期間中に再発した症例は認めなかった。 分割切除では全例 Endoscopic modified medial maxillectomy が, 一塊切除ではさらに Direct approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope, Transseptal access with crossing multiple incisions, Draf type 2a, Draf type 3, Endoscopic medial maxillectomy が施行された。 分割切除は一塊切除に比べて統計学的有意差をもって手術時間が短かった。

 結論: 分割切除や一塊切除にかかわらず, 新規術式を併用することでT3症例に対しても内視鏡下鼻副鼻腔手術により腫瘍切除が可能であった。

著者関連情報
© 2021 耳鼻咽喉科展望会
前の記事 次の記事
feedback
Top