2002 年 45 巻 1 号 p. 49-53
回転性めまい, 急性高度感音性難聴にて初発し, 経過中に顔面神経麻痺, 顔面知覚低下, 小脳症状など多彩な神経症状を呈した前下小脳動脈症候群の1例 (65歳, 女性) を報告した。初診時のCTでは, 明らかな異常所見を指摘しえなかったが, 進行する中枢神経症状およびMRIにて, 中小脳脚, 小脳半球に病巣が認められ, 前下小脳動脈症候群と診断した。本症例は早期診断, 早期治療により, 中枢神経症状の軽快がみられた。耳鼻咽喉科領域において, めまい, 難聴にて初発する鑑別疾患には, 突発性難聴やメニエール病があるが, 本症例のように中枢性疾患の存在も考慮し, 早期に適切な治療の重要性があると考えられた。