抄録
約11年間外来にて経過観察したメニエール病の1症例を経験した。患者のストレスの一つに業務内容の変化があり, 転職後からメニエール病の発作が増加したことから, 仕事や環境の変化などがストレスの誘因である症例と考えられた。また, ひとりっ子の子供の受験がさらに比較的強いストレスとして, めまいを繰り返すとともに耳鳴, 難聴の増悪を示す典型的なメニエール病となった。
メニエール病が遷延化した理由に, 長期間漫然と同じ薬を服用していた状況, 患者を取り巻く環境に大きな変化があったにも関わらず, それに対する適切な対応・治療が不十分であったこと, 医師と患者の関係の問題 (rapport) などが考えられた。メニエール病が遷延化することで, 耳症状の増悪や症状の回復の遅延, 患者に対する心理的な支援も難しくなると考えられた。