抄録
低音部に残存聴力を有するいわゆる高音急墜あるいは漸傾型の聴力像を呈する難聴患者は、補聴器を使用しても聴取能が低く、従来の人工内耳の適応にも該当しないことから補聴に苦慮する症例が多かった。近年、残存聴力のある低音部は音響刺激で、重度難聴の高音部は電気刺激で音を送り込む「残存聴力活用型人工内耳 (EAS: electric acoustic stimulation)」が開発され注目を集めている。EASは人工内耳の適応や可能性を広げるものとして注目されているが、蝸牛への電極挿入と聴力温存という相反する目的を達成しなければならない点にこの医療技術の難しさがある。本稿ではこれまでに当施設で行われたEAS症例の手術法と聴力保存成績について検討した。今回、術後1ヶ月以上経過し純音聴力検査のデータが得られている16例16耳について検討を行った結果、全例で音響刺激を行うのに十分な残存聴力の保存が可能であった。