Otology Japan
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最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
第34回日本耳科学会総会特別企画
耳科学会賞
  • 藤田 岳
    2025 年35 巻2 号 p. 63-67
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)は前庭神経のシュワン細胞から生じる疾患で,感音難聴や耳鳴,めまいが主な症状である.高齢化に伴い患者数が増加しているが,腫瘍による聴力障害メカニズムや,腫瘍の発生・増大メカニズムは依然として不明な点が多い.私たちはこれまで聴神経腫瘍の聴力障害メカニズム解明や,新規治療法,新規診断法の開発に取り組んできた.摘出した聴神経腫瘍細胞の培養系を用いて,細胞外小胞に含まれるmiRNAが聴神経障害を引き起こすことを示した.さらに様々な薬剤の腫瘍増殖抑制効果を検証した.また腫瘍サイズや聴力と相関するバイオマーカー候補の同定も行った.聴神経腫瘍は決して稀な疾患ではなく,多くの症例は手術や放射線治療の適応とならず,いわゆる“wait & scan”となる.聴覚やめまいを専門とする私たち耳科医が積極的に関わっていくべき疾患であると考えており,これからも研究を進めていきたい.

パネルディスカッション1
  • 小森 学
    2025 年35 巻2 号 p. 69-72
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    耳科手術の成功の鍵は,術前の詳細な局所所見の評価にかかっている.本稿では,耳科手術において特に重要となる耳介,外耳道,鼓膜,中耳の局所所見の評価ポイントについて解説する.

    鼓膜の観察に適した体位や,小児と成人での鼓膜の見え方の違い,耳鏡の選択について理解することも重要である.さらに,鼓膜の弛緩部や緊張部の状態,耳小骨の異常,中耳病変の鑑別方法についても詳しく説明する.

    同じ疾患であっても,手術の難易度は異なる.そのため,局所所見から病態を適切に予測し,自身の技量に応じた術前計画を立てることが重要である.

    本稿を通じて,術前の状態を的確に把握する一助となれば幸いである.

  • 水足 邦雄
    2025 年35 巻2 号 p. 73-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    伝音難聴の有無は中耳手術の適応を決定する重要な項目であるため,術前にほぼ必ず純音聴力検査が行われる.しかしそれだけでなく,聴力像は鼓膜を含む中耳,特に耳小骨周囲の病態を反映する重要な所見であり,側頭骨CTなどの画像検査と合わせて術前に十分に検討する必要がある.安全で必要十分な手術を遂行することができる.純音聴力検査を解釈する上で,最低限マスキングの概念を理解し閾値決定が適正に行われているかを確認する必要がある.また複数の病態が混在する場合にも,CTでは描出できていない病態が純音聴力検査に現れていることがあるため,注意深い解釈でより良い中耳手術を遂行することができる.

  • ―耳科手術に必要な画像診断―
    太田 有美
    2025 年35 巻2 号 p. 77-82
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    耳科手術は顕微鏡下手術であっても内視鏡下手術であっても,側頭骨の解剖の理解と画像診断は欠かすことは出来ない.中内耳の高分解能CTの撮影と読影は必須である.まず正常構造がCTではどのように描出されるのかを知っておく必要がある.内耳奇形,耳小骨奇形,顔面神経の走行異常,内耳道狭窄,前庭水管拡大といったイレギュラーな構造の有無を評価する.そして病変の評価として,軟部組織陰影の範囲,耳小骨破壊の有無と程度,石灰化や脱灰像,頭蓋底や内耳骨包の骨破壊の有無を確認する.MRIは,CTで認められる軟部組織陰影の質的評価や,聴神経や顔面神経の評価,内耳の膜迷路の状態の評価に有用である.耳科手術全例に必須ではないが,手術方針を決定する上で必要に応じて撮影する.手術後にも画像を見直すことで,画像診断スキルが向上する.

教育セミナー1
  • 田中 康広
    2025 年35 巻2 号 p. 83-88
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    外耳・中耳の基本処置は耳鼻咽喉科の外来診療において一般的に行われる頻度の高い処置である.外耳や中耳に対する基本処置は多くの場合,顕微鏡下で行われるため,顕微鏡下での処置が適切に行えるように修練することが必要である.

    基本処置を行うにあたり内視鏡を用いた画像ファイリングシステムの整備や診療器具を介した感染に対する予防措置も現代では必要と考えられ,感染リスクや医療安全の観点にも注意を払わなくてはならない.

    本教育セミナーでは外耳・中耳の基本処置として,主に耳垢栓塞,外耳道真珠腫,外耳道真菌症,epithelial pearlの4つの外耳疾患に絞り,それぞれの疾患に対する処置について解説する.

  • 森田 由香
    2025 年35 巻2 号 p. 89-93
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    外耳・中耳の処置は耳鼻咽喉科外来における基本手技であり,特に耳漏を伴う場合には,その原因を的確に診断し,適切な処置を行うことが重要である.適切な診断と処置によって,薬剤投与のみでは得られない早期改善が期待できる.処置には,顕微鏡下または内視鏡下での診察と,顕微鏡下での手術器具を用いた丁寧な操作が求められる.耳漏がある場合,基本処置(培養検査,洗浄,吸引,清拭,肉芽処置)を行った上で,適切な薬剤を投与する.疾患別に耳漏の原因となる病変部は異なるため,耳漏を除去した後に,外耳道や鼓膜,鼓膜穿孔からみえる鼓室内をよく観察する.また,術後耳では,耳小骨,外側半規管,顔面神経などの重要な構造物が露出している場合もあり,慎重に対処する.耳科医にとって外来処置は診療技術を磨く場であり,安全かつ確実な処置を心がけることが求められる.

教育セミナー2
  • ―薬剤全身投与による難聴―
    田渕 経司
    2025 年35 巻2 号 p. 95-98
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    アミノグリコシド系抗菌薬やシスプラチン,ループ利尿薬,サリチル酸製剤は薬剤性難聴を誘発する代表的な薬物として知られている.これらの薬剤は様々な疾患に対する治療薬または症状緩和薬として全身投与により使用されるが,その際に感音難聴をきたす可能性を有する.全身投与の際に惹起される難聴は一般的に両側性感音難聴であり,アミノグリコシドや白金製剤による難聴は一般に不可逆性の難聴を呈することが多いのに対し,ループ利尿薬,サリチル酸製剤は一般に可逆性の難聴を生じる.本稿では全身投与による薬剤性難聴について概説し,各薬物の内耳における作用点,それぞれの典型的な聴覚障害の経過,予防や治療についての考え方等について述べる.

原著論文
  • 吉村 豪兼, 室久 志織, 足立 紗矢香, 工 穣
    2025 年35 巻2 号 p. 99-105
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    本邦の成人人工内耳適応基準(2017)における医学的条件は,「聴力レベルが90 dBHL以上,もしくは70 dBHL以上90 dB HL未満で補聴器装用時の最高語音明瞭度が50%以下」とされている.しかし,諸外国では会話音圧での補聴器装用下語音明瞭度が基準を下回る場合に適応とすることが少なくないのが実情である.本研究は当施設で純音聴力検査と語音聴力検査を施行した症例の中で,平均聴力レベルが70~90 dBHLであった111例135耳を対象とし,補聴器装用下最高語音明瞭度ではなく,会話音圧(65 dBSPL)の補聴器装用下語音明瞭度を基準とした場合の対象症例数の変化を検討した.結果として,現在の適応基準では約半数の症例が該当したが,会話音圧での補聴器装用下語音明瞭度を基準とすると約8割が該当し,適応例が約1.6倍へ増加することが示された.本研究結果は今後本邦の人工内耳適応基準の改訂が検討される際の参考データになると考えられた.

  • 渡邊 輪, 水足 邦雄, 栗岡 隆臣, 荒木 幸仁, 塩谷 彰浩
    2025 年35 巻2 号 p. 106-113
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    唯一聴耳に発症した早期外耳道癌に対する外科的切除と人工内耳手術を併施して,腫瘍制御と良好な聴覚機能を両立した症例を経験したため報告する.本症例はもともと右が術後耳で聾であった.左耳漏を主訴に受診し外耳道腫瘤を認め生検で扁平上皮癌であり,Pittsburgh分類T2の外耳道癌と診断した.唯一聴耳の患側も重度難聴であったため,外側側頭骨切除術と人工内耳手術を併施したが,外耳道外側深部断端が陽性であったため,放射線治療を追加した.術後8ヶ月で施行したFDG/PET-CTで局所再発を疑うFDG集積を認めたため,腫瘍摘出術と同時に人工内耳入れ替え術を併施した.術後の人工内耳装用下での語音明瞭度は良好であり,初回手術後と2回目手術後で装用閾値の変化はなかった.本術式は高度難聴を伴う唯一聴耳に発症した外耳道癌に対して高い根治性と良好な術後聴覚機能を両立できる術式と考えられた.

  • 杉山 智宣, 菊地 さおり, 飯野 ゆき子
    2025 年35 巻2 号 p. 114-119
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    限局性アミロイドーシスは,アミロイドがある臓器に限局して沈着し,臓器障害をきたす疾患である.頭頸部領域における限局性アミロイドーシスは稀であり,その中でも上咽頭アミロイドーシスは非常に稀な疾患である.今回,滲出性中耳炎を主訴とする上咽頭限局性アミロイドーシスを経験した.症例は36歳女性,13年前に他院にて喉頭アミロイドーシスと診断されたが経過観察となっていた.両側中耳に粘稠な滲出液を認め,上咽頭病変の病理組織検査より上咽頭アミロイドーシスと診断された.全身性アミロイドーシス,多発性骨髄腫の合併が否定されたため,無治療経過観察の方針となった.遷延性滲出性中耳炎においては上咽頭アミロイドーシス等の特殊な病態が存在するの可能性を考慮し,耳管咽頭口付近の詳細な観察とともに,異常があれば画像診断,組織診断が必要と考えられた.

  • 迫田 賢人, 藤原 圭志, 本間 明宏
    2025 年35 巻2 号 p. 120-126
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    迷路内神経鞘腫(ILS)は稀な良性腫瘍である.今回,ILS疑いの症例にvHIT・VEMPを複数回施行し,経時的な平衡機能悪化を認めた1症例を報告する.52歳女性,ふらつき・左難聴が出現し近医加療で改善乏しく,その後のMRIで左迷路内の腫瘍性病変を認めILSの診断となり,今後の加療目的に当科紹介となった.初診時はvHITで左後半規管の機能低下を認めたがVEMPでは耳石器の異常を認めなかった.1年後のvHITでは左側3つの半規管全てで機能低下しており,VEMPでも新たに耳石器の異常を認めた.更に2年6か月までの経過で徐々にvHIT,VEMPの結果で悪化傾向を示した.国内外でILS症例にvHIT・VEMPを施行した報告はまだ少なく,渉猟した範囲では経時的に経過を追った報告はない.今後,本症例のようにILSに対してvHIT・VEMPを経時的に施行する症例が増えていくことで,ILSの病勢把握や病態理解の一助となりうると考える.

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