Otology Japan
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第29回日本耳科学会総会特別企画
テーマセッション10
  • 宇佐美 真一
    2020 年 30 巻 3 号 p. 149-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    現在,残存聴力活用型人工内耳(EAS: electric acoustic stimulation)は低音部に残存聴力を有する高音障害型難聴患者に対する標準的な医療として定着している.本総説では聴力温存手術の現状とともに,聴力温存に関与するいくつかの因子(手術アプローチ,電極の種類,長さ,挿入深度,電極挿入スピード,ステロイドの使用,年齢,蝸牛長,蝸牛容積,遺伝的要因)について我々のデータを中心にこれまでの報告と合わせ検討を行った.EAS手術の際には,聴力温存に関与する因子を踏まえ,その患者にとって最適な治療,デバイスの選択をすることが重要である.EASの基本にある残存聴力温存(hearing preservation)の概念は,内耳の構造保存(structure preservation),聴神経(ラセン神経節細胞)の保護という観点からもすべての人工内耳に通じる考え方として重要である.

テーマセッション11
  • 山内 大輔, 川村 善宣, 本藏 陽平, 小林 俊光, 池田 怜吉, 宮崎 浩充, 川瀬 哲明, 香取 幸夫
    2020 年 30 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    上半規管裂隙症候群は,1998年マイナーによって最初に報告され,これまでいくつかの手術法について報告されてきた.正円窓閉鎖術はいわゆる“third window theory”に基づいた術式であるが,その効果は限定的であることが報告されている.一方,中頭蓋窩法によるpluggingまたはresurfacingの場合は,ほとんどの症例で裂隙部を直接確認できる.しかし,裂隙部が上錐体静脈洞に位置している場合は困難となる.さらに頭蓋内合併症のリスクのため,安易には手術を勧められないジレンマがある.そのため,耳鼻咽喉科医にとって中頭蓋窩法よりも経乳突洞法によるpluggingの方が容易な術式であるが,下方からでは裂隙部を確認しづらく,また感音難聴の合併症のリスクが潜んでいる.

    著者らは経乳突洞法によるpluggingに水中内視鏡を用いることで安全性を高める方法に改良した.乳突削開術後,浸水下に内視鏡を用いることで,膜迷路と裂隙部を明瞭に観察することが可能であった.たとえ裂隙部が上錐体静脈洞に位置していても,内側からアプローチできるので有用であった.本術式の方法や適応,術後成績について報告する.

原著論文
  • 日本耳科学会保険医療委員会, 池田 怜吉, 伊藤 吏, 櫻井 結華, 奥野 妙子, 小島 博己, 大島 猛史
    2020 年 30 巻 3 号 p. 167-170
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    耳管開放症は,診断・治療共に新しい展開が見られており,これらの実態把握が喫緊の課題となっている.そこで,全国医育機関並びに日本耳科学会代議員を対象にアンケート調査を施行した.診断基準案の使用率は76.5%であり,約半数の施設がJK05-Aの機種を使用していた.保存的治療は生活指導,漢方薬投与,生理食塩水点鼻療法が多くの施設で採用されていた.保存的治療で改善しえない難治例は年間581.7人存在した.手術治療としては,経鼓膜換気チューブ留置,耳管ピン留置術が多く施行されていた.今回のアンケート結果を踏まえ,今後の耳管機能検査の普及並びに手術的治療の普及が望まれる.

  • 松田 信作, 柿木 章伸
    2020 年 30 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    Malleus barは骨性鼓膜輪とツチ骨を繋ぐbony barを指す.野村らが1988年に初めて報告し,船坂の分類に含まれない耳小骨奇形である.本症例は9歳女児で,アデノイド増殖症と睡眠時無呼吸症候群の疑いにて当院へ紹介受診した.外来初診時の所見と問診から難聴を疑い,純音聴力検査及びティンパノメトリーを施行した.患側である右側の平均聴力は3分法で51.7 dBHL,左15.0 dBHLで,患側の最大気骨導差は40 dBであった.ティンパノグラムは右C型,左A型であった.CT検査にてMalleusより後方に伸びるhigh densityの構造を認め,Malleus barの可能性を考え手術(試験的鼓室開放術,経外耳道的内視鏡下耳科手術)を予定した.Malleus barの削除後,キヌタアブミ関節の連鎖不全を認めた為鼓室形成術IIIi-Mを追加した.術後の聴力はほぼ左右差のない状態にまで改善した.これまでの報告ではmalleus barの削除のみよりも伝音再建を行った症例の方が,聴力の改善を認める傾向があり,鼓室内の詳細な観察を行う上でも経外耳道的内視鏡下耳科手術は有用であると考えられた.

  • 成尾 一彦, 堀中 昭良, 松山 尚平, 西村 忠己, 北原 糺
    2020 年 30 巻 3 号 p. 176-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    過去に3回の手術既往がある1型糖尿病を併存した真珠腫性中耳炎再発例で術中に髄液漏が生じ,その制御に結合組織や耳介軟骨に加え脂肪を充填し,さらにスパイナルドレナージを行い,術後には細菌性髄膜炎を合併したが幸い重篤な後遺症なく治癒した症例を経験した.術前に外耳孔が閉鎖しており,病変が天蓋方向の骨組織や硬膜を長期にわたり圧排したため菲薄化した硬膜が術中に破綻し髄液漏が生じたと推測された.術後はスパイナルドレナージにより持続的に髄液を排液し,創部からの髄液漏出を制御し瘢痕治癒をはかった.細菌性髄膜炎の治療は,細菌性髄膜炎診療ガイドライン(2014)に従い抗菌薬投与を行った.真珠腫性中耳炎の手術に際し,硬膜の露出は時に遭遇するが,髄液漏に遭遇することはまれである.しかし,髄液漏が予想される症例では術前の脳神経外科へのコンサルテーションならびに髄液漏が生じた際の対処法に精通しておく必要がある.

  • 御任 一光, 桑原 幹夫, 近松 一朗
    2020 年 30 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    中耳腺腫は本邦で数例の報告しかない稀な疾患であり,WHOの中耳腫瘍組織分類では,中耳カルチノイドや神経内分泌腫瘍と類義疾患の扱いである.長期的に22%に局所再発し,再発例の14%に頸部転移を来した報告もあり低悪性度腫瘍として考える必要がある.中耳腺腫の一例を経験したので文献的考察も踏まえ報告する.本症は耳鳴,難聴を主訴に当科受診した.外耳道に腫瘤性病変を認め,造影CT,MRIで鼓室内に淡く造影される腫瘤を認めた.試験的鼓室開放術の病理検査で,管腔形成を持つ核異型のない上皮性腫瘍で,免疫染色にて上皮系及び神経内分泌系マーカーが陽性であり,中耳腺腫の診断となった.二期的に鼓室形成術を行った.腫瘍は中鼓室を中心に存在し,顔面神経窩や鼓室洞,正円窓付近に進展していた.視診上は完全切除でき,軟骨コルメラにてIIIc再建とした.現在再発なく経過中だが,10年以上してから再発・転移する例もあり長期的な経過観察が必要である.

  • 三輪 徹, 蓑田 涼生, 魏 范研, 折田 頼尚, 富澤 一仁
    2020 年 30 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    ミトコンドリア(mt)機能異常は,老化や加齢性難聴に影響を与えることはよく知られている.また,mt異常症の一部では,mt-tRNAの化学修飾の欠損がその発症の原因であることが明らかになっている.mt-tRNAの化学修飾はコドン解読の際の誤翻訳の防止に必須であり,化学修飾の欠損は誤翻訳を惹起し,電子伝達系タンパク質合成を減少させ,活性酸素の産生を誘起し組織傷害を起こすと考えられている.今回我々は,mtの機能異常に伴う加齢性難聴の発症メカニズムを探るために,mt-tRNA化学修飾が欠損しmt機能異常が認められているcdk5rap1ノックアウトマウスを用いて,加齢による内耳での代謝性変化について検討を行った.メタボローム解析の結果,加齢性難聴が発症する段階で,内耳内にmt機能異常を示す,好気呼吸・嫌気呼吸・解糖系代謝産物であるフマル酸,ピルビン酸,乳酸に変化がみられることが明らかとなった.このことより,加齢性難聴の発症にmt機能異常が関与することが代謝レベルで明らかとなった.

  • 鈴木 英佑, 綾仁 悠介, 萩森 伸一, 菊岡 祐介, 尾﨑 昭子, 稲中 優子, 乾 崇樹, 河田 了
    2020 年 30 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    現代医療ではMRIは不可欠な検査であり,日々多数施行されている.しかしMRIが生じる騒音に対しては,十分注意が向けられているとは言い難い.今回我々はMRIの騒音に起因した急性音響性難聴を3例経験し,うち2例は不可逆であった.3例とも3.0テスラのMRIを用いており,騒音対策はイヤーマフもしくは耳栓の不完全な単独装用であった.MRI検査による聴覚障害を来たさないためには,防護策の徹底が必要である.画像診断上支障がなければ,騒音の小さな1.5テスラのMRI検査を用いることも対策の一つである.また耳栓とイヤーマフの両者を確実に装用することが重要であると考える.

  • 大谷 巌, 鈴木 康士
    2020 年 30 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/05
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,当初,側頭部の強打による迷路振盪症が疑われたが,その後心因性難聴と診断された症例を経験したので報告する.症例は32歳女性で,作業中に左側頭部を強打し,受傷直後より左難聴を自覚し,受傷6日後に当科を受診した.初診時の左耳の聴力は平均51.3 dBの水平型の感音難聴を示し,迷路振盪症が疑われた.しかし経過中に,聴力は87.0 dBまで悪化し,オージオグラムは混合難聴を示し,さらに高度の難聴にも拘らず補聴効果が良いことなどから,心因性難聴が疑われた.ABR(聴性脳幹反応)検査は正常な反応を示し,心因性難聴と診断された.受傷約6ヶ月後に会社を退職すると,翌日に難聴は回復していた.事故現場の職場に行く恐怖心が誘因と考えられた.診断に当たっては,難聴を引き起こしうる頭部外傷を受けた場合であっても,心因性難聴の可能性を念頭におく必要性があると思われた.

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