Otology Japan
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最新号
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第30回日本耳科学会総会特別企画
テーマセッション9
  • 森田 由香
    2021 年 31 巻 4 号 p. 365-370
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    ANCA関連血管炎性中耳炎(Otitis Media with ANCA–Associated Vasculitis: OMAAV)の鼓膜所見を詳細に検討し,滲出性中耳炎と区別するスコアの作成を試みた.はじめに,滲出性中耳炎では通常みられない血管拡張,鼓膜肥厚,後壁腫脹をスコア項目としてスコアリングシステム(SCOT: SCoring system for OMAAV Tympanic membrane)を作成した.次に,OMAAV 10耳と滲出性中耳炎10耳の鼓膜所見を順不同にならべ,当科の医師20名がつけた各スコアから信頼性と妥当性を評価した.その結果,各項目と合計スコアは,OMAAVでいずれも滲出性中耳炎に比べて有意に高かった.級内相関係数はいずれの項目も0.95以上と高く,さらにSCOT合計点数についてOMAAV診断のためのROC曲線を作成したところ,Area Under the Curveは0.9134であり,カットオフ値を2点とすると感度93%,特異度74%となり,信頼性・妥当性が高いことが示された.OMAAVの診断は診断基準に則って行うものであるが,日常診療において,鼓膜所見の詳細な観察,つまりSCOTによる鼓膜所見の定量化は,OMAAVの診断に際して有用であると考えられた.

テーマセッション11
  • 滝本 泰光, 今井 貴夫, 花田 有紀子, 宇野 敦彦, 鎌倉 武史, 北原 糺, 猪原 秀典
    2021 年 31 巻 4 号 p. 371-375
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    シスプラチンの聴器毒性は広く知られている.また,前庭器毒性による眩暈の副作用も報告されている.多くの動物実験でシスプラチンによって前庭感覚細胞が障害されることは報告されているが,生存しているマウスを用いた前庭機能を評価した研究はほとんど報告されていない.我々は,240 Hzハイスピードカメラを用いたマウス回転検査装置を新たに開発し,マウスの半規管機能の評価を可能にした.その検査装置を用いて,シスプラチン投与後の半規管機能を評価し,障害の程度を明らかにした.振り子様の水平回転運動で誘発される前庭動眼反射を測定して外側半規管機能を評価した.結果は,シスプラチン投与後,外側半規管機能は高周波数回転時でのみ有意に障害されていた.視運動性眼振は障害されていなかった.本研究の結果から,シスプラチンによる半規管に対する影響を調べるには高周波数を刺激する検査が必要と考えられた.

ネクストジェネレーションセッション2
  • 中西 啓
    2021 年 31 巻 4 号 p. 377-382
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    NLRP3遺伝子はNLRP3蛋白質をコードする遺伝子で,単球,マクロファージなどの自然免疫担当細胞に発現している.NLRP3が活性化されると,NLRP3インフラマソームと呼ばれる蛋白質複合体が形成され,炎症性サイトカインであるinterleukin-1βの分泌が誘導され炎症が惹起される.われわれは,NLRP3遺伝子変異により非症候群性難聴が生じることを世界で初めて明らかにした.この家系の患者では,難聴以外の症状が認められなかったため,蝸牛内に組織マクロファージが存在し,NLRP3遺伝子変異によりNLRP3インフラマソームが活性化され,蝸牛内炎症が惹起されて難聴が生じたという仮説を立てた.この仮説を証明するためにマウスを用いて実験を行い,マウス蝸牛にマクロファージ様細胞が存在し,NLRP3インフラマソームが活性化されることを明らかにした.

ネクストジェネレーションセッション7
  • 細谷 誠
    2021 年 31 巻 4 号 p. 383-389
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    近年,分子生物学的知見の集積に伴い,先天性難聴に対する遺伝子治療や,内耳再生への期待が高まる一方で,基本となるヒト内耳発生の検討は倫理的な問題から年々困難となっている.このため齧歯類モデル動物が頻用されている.しかし齧歯類から霊長類およびヒトに進化する過程での蝸牛の変化についてはあまり多くの検討がなされていない.

    進化の歴史の中で考えた場合聴覚の受容器としての蝸牛の獲得は比較的新しい.進化の過程で形態をダイナミックに変化させてきた脊椎動物の聴覚器に関する学術的な興味は,古くからある科学的課題の一つであるが,このような「系統発生」と「進化」の知識は「個体発生」の研究を行う際に時に重要な知見を我々にもたらしてくれる.

    本稿では,当科で霊長類モデル動物として利用しているコモンマーモセットに焦点を当て進化学的な知識を踏まえたうえで内耳発生における進化と種差の影響について最近の我々の知見を報告する.

  • 木村 優介, 加我 君孝
    2021 年 31 巻 4 号 p. 390-396
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    目的:18トリソミーの1症例の内耳の形態異常(malformation)の発生機序を胎生期の内耳発生(organogenesis)から考察する.

    対象:胎生期のヒト側頭骨組織病理標本と在胎35週に死産となった18トリソミー症候群の1例の病理標本を調べた.

    結果:蝸牛は2回転と短く,頂回転は低形成であり,蝸牛軸は短く,蝸牛神経管開口部の狭窄を認めた.蝸牛中回転までは蝸牛管・前庭階・鼓室階の3層の膜性の構造が確認でき,基底板上にはコルチ器の形成を認め,外・内有毛細胞,血管条の形態には異常を認めなかった.球形嚢は低形成であった.卵形嚢は平衡砂膜と感覚上皮を認め,卵形嚢周囲の迷路骨包の骨化も認めた.前半規管は正常な管腔構造を認めた.外側半規管は太く短く,低形成であり,外側半規管膨大部稜のクプラの形成は認められず,外側膨大部神経の走行異常を認めた.後半規管は管腔構造が小さく低形成であった.

    結論:蝸牛形態は,恐らく膜迷路の蝸牛管の発生が胎生6–8週に停止したため,2回転の低形成な時点で迷路骨包の化骨が始まり,膜迷路全体と迷路骨包の低形成の誘因となったと推定した.コルチ器の分化と骨迷路の骨化は進んだと考えられる.耳石器・半規管の分化をみても胎生20週相当まで発生は進んでいる.これまでの18トリソミーの報告例と比較して,蝸牛の低形成と半規管の低形成など比較的報告が多い形態異常を本症例でも認めた.

トランスレーショナル委員会企画
  • (テーマ:IGF1を用いた突発性難聴の治療)
    中川 隆之
    2021 年 31 巻 4 号 p. 397-401
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    インスリン様細胞増殖因子1(IGF1)は,広く生体の成長に関与するホルモンであり,同時に生体局所でオートクラインあるいはパラクラインで働く細胞増殖因子として知られ,内耳の発生,生後の発達,維持に欠かせない液性因子である.われわれは,IGF1局所投与による急性感音難聴治療に関する基礎的研究開発から臨床応用を目指した橋渡し研究を実施した.本プロジェクトでは,早期から臨床応用を意図した研究開発を行ってきたが,医師主導治験実施には想定とは異なるいくつもの関門が存在した.現状から振り返り,基礎的研究開発の段階から想定しておくべき事柄について整理し,理想的な進捗方法について考察する.

  • (テーマ:難聴遺伝子研究の実用化)
    宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 4 号 p. 402-409
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:耳管ピン)
    小林 俊光, 池田 怜吉
    2021 年 31 巻 4 号 p. 410-414
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:中耳加圧療法)
    將積 日出夫
    2021 年 31 巻 4 号 p. 415-418
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:軟骨伝導補聴器)
    西村 忠己
    2021 年 31 巻 4 号 p. 419-424
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:Pendred症候群の治療)
    藤岡 正人, 西山 結美, 秋山 琢己
    2021 年 31 巻 4 号 p. 425-434
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    先進国で新規治療法の創出にむけた臨床試験を行う際は,病態についての科学的見地に基づいた分子細胞生物学的作用機序を前提としつつも,新規治療法の安全性に関する情報と,有効性を科学的に推定する非臨床Proof of Concept(POC)が求められ,通常,有効性に関する非臨床POCには疾患動物モデルでの治療効果推定データが求められる.私たちが数年来進めてきたPendred症候群/DFNB4の内耳障害に対するiPS細胞創薬は,この非臨床POCの過程において,通常疾患動物モデルを用いるところを,iPS細胞技術を用いたin vitroモデルで代替することで実疾患症例への投与(FIP:First-in-patient試験)が可能と判断された,先進国初の事例である.本稿では,トランスレーショナルリサーチにおいて欠かすことのできない,FIP前の薬事戦略,すなわち,国際規制を踏まえながら,いかにして安全性・忍容性と有効性に関する理論構築を行い,規制当局が必要としている国民への説明の責務を担保し,実際の初期臨床試験まで至るかについて,当該iPS細胞創薬研究でどのようにして積み重ねてきたかを伝えたい.

    一般に,アカデミア発技術の社会実装においては,科学的見地と,関連法規対応,出口企業との折衝を含めた,産学官連携の過程が必須となり,先進的な“とがった”シーズほど,既存の枠組みに基づいた画一的議論から逸脱するために,折衝は難航しがちである.大学,企業,規制当局と,それぞれ立場が全く異なる中での折衝における一番のポイントは,「患者のためになる新規治療の創出」という目標を共有することと考える.その上で,産学官における各調整相手の置かれた環境と内在性論理構造を理解し,先廻りしてコミュニケーションを取っていくことが,初期臨床開発に進む成功の最大の秘訣であろう.

  • (テーマ:リティンパ)
    金丸 眞一
    2021 年 31 巻 4 号 p. 435-445
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    新治療の開発と実用化への過程は,基礎研究にはじまり,非臨床試験,治験を経て薬事承認申請を行い保険適用に至る.これらの道のりには少なくとも10年以上の歳月と乗り越えなければならない数多くのハードルがある.この中でもシーズをいかにして臨床試験に進めるか,特許取得,パートナー企業をみいだすことが最も重要な要件であると考えられる.筆者の鼓膜再生療法は,国が制定した橋渡し機関の一つである先端医療振興財団(現神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)で支援を受け,パートナー企業の紹介,医師主導型臨床治験の実施など実用化の方向に大きな歩を進めることが出来た.

    2019年11月に鼓膜再生療法は,健康保険適用となった.数年間は,市販後調査の段階で有効性や安全性の検討がなされているが,筆者の所属する北野病院での1昨年の治療成績は,鼓膜再生率が98%,全例で聴力改善を認め,重篤な有害事象はなかった.いっぽうで,鼓膜穿孔を有する患者のうち鼓膜再生療法の適用は,わずか20~30%程度である.今後,適用患者数をいかにして増大させるかが大きな課題となる.なかでも,鼓膜穿孔の原因疾患として最も多い慢性中耳炎の患者に対して,内視鏡を使用し経鼓膜的に鼓室内の病変除去清掃と鼓膜再生を組み合わせた新しい鼓室形成術の開発を行っている.

    さらに,海外展開を開始しておりこの低侵襲な治療を先進国のみならず,発展途上国にも広げて行きたいと考えている.

  • (テーマ:BAHA(Bone Anchored Hearing Aid))
    喜多村 健
    2021 年 31 巻 4 号 p. 446-450
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:EAS(残存聴力活用型人工内耳))
    宇佐美 真一
    2021 年 31 巻 4 号 p. 451-458
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
  • (テーマ:人工中耳VSB(Vibrant Soundbridge))
    岩崎 聡
    2021 年 31 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー
原著論文
  • 中野 光花, 篠原 宏, 清水 啓成, 松田 帆, 池園 哲郎
    2021 年 31 巻 4 号 p. 465-471
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    外リンパ瘻はあぶみ骨直達外傷や鼻かみ等により外リンパ腔と中耳や頭蓋内の間に瘻孔が生じ,めまいや難聴をきたす疾患である.我々は当院を受診した急性感音難聴症例,くり返す難聴・めまい症例全例,計121例125耳にcochlin-tomoprotein(CTP)検査を行い,CTP陽性例がどの程度存在するか検討した.全症例に詳細な問診を行って,診断基準に従い外リンパ瘻を起こす誘因のある症例を外リンパ瘻疑い,誘因の無い症例は特発性症例とした.

    CTP陽性症例は全125耳中,外リンパ瘻疑い27耳中の4耳のみで,外傷によるカテゴリー1の3耳と内因性圧外傷によるカテゴリー3の1耳であった.特発性症例98耳は全て陰性であった.高齢者は蝸牛窓膜などの内耳構造が脆弱であるとの報告もあるが,60歳以上の高齢者の特発性例51耳は中間値の1耳を除き,全て陰性であった.

    以上より,急性感音難聴やめまい症例の中で外リンパ瘻を疑う明らかな誘因のない特発性症例では外リンパ瘻の可能性は低いと考えられた.

  • 冨岡 亮太, 河野 淳, 太田 陽子, 白井 杏湖, 塚原 清彰
    2021 年 31 巻 4 号 p. 472-478
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    前彎曲電極であるCI532(コクレア社,オーストラリア)では,電極の前庭階への挿入が多くなり,電極先端の折れ曲がり(tip-fold-over)がしばしば問題となる.当院ではこれまで32耳のCI532植込み術を施行し,tip-fold-overを2例経験した.原因につきビデオを精査した.症例1.2ともにtip-fold-overを起こした際のシースハンドルの位置は基底膜方向へ向いており,適切な挿入が出来た際は蝸牛軸を向いていた.当院での挿入方向の不適正は3例あり,3例中2例でtip-fold-overが生じた.シースハンドルの向きが重要と考えられた.また,シースに電極を収納する際に,電極の回転面がシースハンドルの面からややずれている症例も認められた.これらにtip-fold-overは確認できなかったが,電極をシースに収納する前に,電極の回転面の確認が必要である.また回転面のずれを確認した場合には,その角度を考慮したガイド推奨角度での挿入が必要と思われた.

  • 松田 悠佑, 奥田 匠, 上江 愛, 髙木 実, 我那覇 章, 東野 哲也
    2021 年 31 巻 4 号 p. 479-484
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    残存聴力活用型人工内耳(EAS)の保険適応は短い電極(Flex24電極)に制限され,この場合のみ音響刺激機能を有した体外器(DUET2, SONNET EAS)が選択できる.今回,通常人工内耳電極(Flex28電極)術後の残存聴力に対しDUET2を用いてEAS効果を検討する.症例は50歳時に両側難聴を主訴に宮崎大学医学部附属病院耳鼻咽喉科を初診,両側高音障害型感音難聴を呈していたため左耳にFlex24電極を用いた残存聴力活用型人工内耳手術を施行した.術後2年半は残存聴力が温存されたがその後,低音域聴力の増悪を認めた.右耳には初診時から補聴器装用を継続していたが59歳時に装用効果の悪化を認めたためFlex28電極を用いた人工内耳手術を施行した.裸耳聴力は術後18ヶ月目でも低音域聴力が温存されており,対側で使用していたDUET2を用いて音響刺激を加える(EAS)と雑音下に加え静寂下でも電気刺激のみのマップより良好な語音聴取成績を示した.今後,使用人工内耳電極の長さや形状に関わらず,残存聴力に応じてEASが可能な体外器の選択ができる制度が望まれる.

  • 田中 健, 相原 康孝, 石井 賢治, 比野平 恭之, 林 賢, 原 稔, 門田 哲弥, 三浦 康士郎, 本岡 太心, 加我 君孝, 神尾 ...
    2021 年 31 巻 4 号 p. 485-489
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    迷路気腫と気脳症を伴った航空性外リンパ瘻の一症例を経験したので報告する.症例は28歳男性で,飛行機搭乗後から耳痛・耳鳴り・難聴・回転性めまいを自覚した.他院で外リンパ瘻と診断され,発症後2日目に当院へ受診となった.左耳の聴力は複数の測定周波数でスケールアウトであり,CTで内耳と頭蓋内に空気と思われる低吸収域を認めた.同日緊急入院となり,抗菌薬と副腎皮質ステロイドを投与したのち,発症後4日目に瘻孔閉鎖術を施行した.耳小骨連鎖は正常であったが,アブミ骨底板が卵円窓からわずかに浮いている状態であった.外リンパの漏出は確認できなかったが,内耳窓を皮下組織と薄切軟骨で被覆しフィブリン糊で固定した.手術翌日からめまいは改善し,術後11日目で眼振は消失した.術前に聾だった聴力は,術後4か月目に70.0 dB(4分法)まで改善した.

    航空性外リンパ瘻に気脳症まで生じた稀な症例であり,どのような機序で頭蓋内に空気が混入したか考察を行った.また,中耳洗浄液のCTP(cochlin-tomoprotein)検査が陰性であったのは,外リンパが大量に漏出して産生が追い付かず,検体採取時には枯渇していたためではないかと考えられた.

  • 山田 浩之, 今村 香菜子, 中山 梨絵, 若林 毅, 大石 直樹, 小川 郁
    2021 年 31 巻 4 号 p. 490-496
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    軟骨伝導補聴器の最良の適応症として外耳道閉鎖症があるが,その理由として従来の骨導補聴器と比較して軟骨伝導補聴器の方に利点が多いことが考えられる.当科では浅在化鼓膜や術後乳突腔障害などで聴力改善手術の適応が無い症例に対する聴覚補償の選択肢の一つとして軟骨伝導補聴器を試聴してもらっている.しかし今までに数例に軟骨伝導補聴器を試聴してもらったが,適合した状態の気導補聴器と比較すると,気導補聴器を選択する傾向にあり,術後耳に対する軟骨伝導補聴器の適応の判断に難渋している.一方で両側中耳根治術後耳後部瘻孔のある患者に対し,軟骨伝導補聴器を使用したところ,非常に良好な成績を得ることが出来た.中耳根治術後耳後部瘻孔患者は高齢のことが多く,また若年より難聴があるため,聴力の改善を断念している患者も多い.軟骨伝導補聴器はこのような患者にとって有用な聴覚補償器機であると考えるため,広く啓蒙していく必要がある.

  • 山下 哲範, 藤田 裕人, 西村 忠己, 山中 敏彰, 北原 糺
    2021 年 31 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/25
    ジャーナル フリー

    外傷性耳小骨連鎖離断はしばしば遭遇する疾患であるが,キヌタ骨が鼓室外にまで転位することはほとんどない.今回,我々はキヌタ骨が欠けることなく完全な形で外耳道皮下に脱出した頭部外傷による外傷性耳小骨連鎖離断の1例を経験した.症例は51歳の男性,頭部外傷で当院救急科に搬送され,翌日に外耳出血が続くために当科に紹介受診された.側頭骨CTで耳小骨連鎖離断が判明し,頭部外傷の治療が終了後の受傷約6か月後に手術を施行した.手術では,外耳道骨膜下にキヌタ骨が完全な形で存在するのを確認後,キヌタ骨を摘出し耳小骨連鎖をIIIi-Mで再建した.本症例では,術直前に3D-CT撮影を行い,変位したツチ骨と鼓膜,中耳の関係を詳細に把握することで円滑に手術を遂行することが可能であった.

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