2013 年 82 巻 12 号 p. 1060-1061
グラフェンの爆発的な研究の進展は,非常に結晶性のよいKISHグラファイトがあり,それが転写という簡易な手法でデバイス作製できた点にあります.転写自体は,日本発ではないのですが,グラフェン研究に用いられている良質のKISHグラファイトはコバレントマテリアル(株)で長年の経験を基に作られており,それが世界中に広がっています.またグラフェンと相性のよい高純度hBN結晶も物質・材料研究機構で時間をかけて作られていたもので,どちらの結晶も日本発のものです.今回は,前半の外谷氏による記事でKISHの育成から,インターカレーション,STMの原子像取得用の結晶,そしてグラフェン転写へと続く歴史的な背景をご紹介いただきます.後半の谷口氏と渡邊氏による記事では,高純度cBNの高圧合成研究の過程で得られた高純度hBNの結晶育成からグラフェン基板展開までの経緯を紹介していただきます.また,本号の「最近の展望」には,これら2つの結晶から作られた複合原子層デバイスを用いて量子輸送現象を理解しようとする試みが紹介されています.これまで独立して研究が進んでいたものが結び付いたとき,大きなブレークスルーになるという1例ではないでしょうか.
[長汐晃輔・本誌編集委員]