人工知能(AI)の導入は研究の現場を大きく変え始めています.自動化された実験システムは研究者の手を解放し,創造の新しいアプローチや,研究者同士の新たなコラボレーションを生み出すことが期待されています.これらの変化は,研究の効率化やスピードアップを可能にする一方で,研究者の役割や姿勢にも新たな問いを突きつけています.
本座談会では,AI 研究の実務に携わる専門家と,応用物理学分野の研究者が集い,「具体的に変わりつつある研究現場において,研究者はいかに振る舞うべきか」を議論しました.実験自動化の現状と課題,研究者マッチング,そして次世代の研究者育成に向けた教育に関して,現場感覚に根ざした意見交換を行いました.
日々進展を遂げる機械学習技術は,応用物理分野においても不可欠なツールとなっている.本稿では,統計的機械学習とマテリアル・デバイス研究の接点について,嗅覚センサとして利用できる超高感度小型センサ「MSS」を用いた研究を題材に概説する.MSSと機械学習を融合し,複雑な混合気体である「ニオイ」を解析する応用研究である.ニオイを定量予測する「回帰」,カテゴリを識別する「分類」,基準を定義する「エンドポイント検出」という3つの機械学習アプローチを通じ,ニオイのデジタル化の最前線を俯瞰(ふかん)する.物理現象の新たな解釈やデバイス設計指針を与える「知的パートナー」として,統計的機械学習が利用できることを伝えたい.