2017 年 86 巻 5 号 p. 392-396
SiCは高耐圧・低損失のパワーデバイス用半導体として注目されている.パワーデバイスの構造設計と特性予測には,デバイスシミュレーションが有効であるが,SiCではシミュレーションで用いるべき基礎物性に不明もしくは精度の低いものが多い.本稿では,パワーデバイスの耐圧設計で必須となる衝突イオン化係数を実験的に求めた結果を紹介する.さまざまなエピタキシャル構造を有するpn接合ダイオードを作製し,紫外光照射時の光電流の逆バイアス電圧依存性からキャリヤ増倍係数を求め,これを解析することによって,電子および正孔の衝突イオン化係数の電界強度依存性を求めた.また,測定時の温度を変化させることにより,衝突イオン化係数の温度依存性を明らかにした.得られた衝突イオン化係数を用いることにより,SiCデバイスの耐圧とその温度依存性を精度よく再現できる.