応用物理
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濃度匂配を有する金屬組織の光電池による定量的測定
長谷川 正義鈴木 登貴治
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1950 年 19 巻 5 号 p. 159-163

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抄録

(1) 先づ標準試料については、その炭素含有量と光電流の變化との關係は、かなり満足すべき値が得られた.しかしこれは標準試料の組織,腐蝕が適當なことを條件とするから,成る可く多數の試料を準備することが望ましい,亜共析との2直線の傾斜は理論的に求めた場合とはなかり異る場合があるが,これは腐蝕液に對するフェライトとセメンタイトの抵抗が異ることによるものであろう.この兩端兩直線の交點の炭素量を以て共析組成と定めたが,何れの場合も0.80~0.85%Cの範圍であるつた2)
(2) 組織成分の明暗のコントラストを強調するためあ腐蝕液としては,5~10%のピクリシ酸アルコール液で10~20秒處理し,直に短時間5%硝酸アルコール液で腐蝕する方法がよい.そして測定時には青色のブイルクーを使用する.
(3) 顯微微鏡倍率の決定は,試料の儉鏡面の深さ.組織の精粗.光電池の感度,及び反射光の照度等に左右されるが,50~100倍の範圍では特に差がない様である。これ以上の倍率は實験していないが,恐らくパーライトの微細組織が分解される倍率では使用出來ない、又照度についても他の條件に適合した最高條件が存在する筈である.
(4) 測定の平均精度は,現在の装置では大體熟練者による肉眼判定の揚合と同程度であるが,個人誤差のないこと,組織の差違による誤差の少ないこと等は本法の利點であろう.この點は光電池の感度の良いものが得られゝば容易に向上出來ると思われる.誤差の原因は,第1に組織の腐蝕程度の不均-こよるもの,第2には光源照度の變動によるものが最大て,この他に装置各部が緊密に固定されていないこと,光源の強さが猶弱いこと等も考えられる.
(5) 本實験は.鋼の滲巌層について光電池による濃度勾配測定の可否を儉討したもので,大體,迅速に個人誤差なく測定するぐとが可能なる(にとを確め得たが.更に上記の如き點を改良し,特に感度の大なる光電池を得れば腐蝕方法の検討と相挨つて實用の域に達する精度が得られるものと思われる.
なお,滲炭層の深さが淺い場合,或は他の擴散層-例えば脱炭層,金屬セメンテーション層等の測定にも本法を應用することの可能性も考えられるであろう
終りに.装置の工作、セット及び電流同路の測定等に協力した葛生,小出,内由君等に感謝の意を表する.

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