抄録
現象の動的研究を原子の尺度で可能とした超高電圧電子顕微鏡によるその場実験法は,自然科学,特に材料科学の研究に画期的な手法として,新しい研究分野を開拓してきた.本稿は,この手法の特徴ならびに適用条件をはじめ,以下のような分野を例として,その現状と将来について述べたものである. (1) 材料の機械的性質と転位の挙動,(2)変形双晶およびマルテンサイト変態の形成機構, (3) セラミックスの強靱化機構,(4)その場加熱および冷却実験の話題,(5)雰囲気試料筒を用いたその場実験の話題, (6) 照射効果のその場実験にっいての話題, (7)超高電圧電子顕微鏡を用いた高分解能その場実験, (8) その場実験法の将来.