メゾスコピック構造と呼ばれる試料サイズが1ミクロン程度の小さな試料では,マクロな試料ではみられない多彩な効果が観測されている.拡散的伝導領域におけるコンダクタンスのゆらぎ,リング構造におけるAB効果に代表さ:れる電子波干渉効果にはじまり,コンダクタンスの量子化に代表されるバリスティック伝導,最近では,さらに小さなナノ構造においてクーロンプロッケードや単電子トンネル効果が注目を集めている.これらの現象は,電子の持っ波動性や電荷が1電子レベルで重要であることを示している.これまでのところ,現象が観測されるのは液体ヘリウム温度以下であるが,電子波エレクトロニクスやシングルエレクトロニクスなどの応用を目指した言葉も生まれている.本総説では,進展めまぐるしい本分野を一部は振り返りながら,現状を述べてみたいと思う.