抄録
通常、高専では高校と同様に精読式授業が行われている。しかし、近年、「ゆとり教育」の申し子たちが入学して
きており、従来の精読式授業を続けるだけでは彼らへの対応が難しくなっている。そこで、今後の国語授業におい
ては精読式授業に加え、新たに多読式の授業を導入し、その有効性が検証されなければならないと考える。
本研究では高専2 年生を対象とし、国語の授業内における多読を試みた。しかし、対象図書、時間等を外国語教
育の場合のように個人のレベル、好みに応じて個人に一任することはせず、指導者が国語教科書掲載の教材に限定
することとした。その理由の第1 は、教科書の有効活用を図るためである。授業で扱われずに終わってしまう多く
の教科書教材に幅広く触れることで学生の興味・関心を広げさせることが可能となる。理由の第2 は、学生に繰り
返しの多読を強いることで読書習慣を身に付けさせるためである。この結果、学生の自主的読書が見られ始め、全
体としては学習意欲の向上が見られた。一方で、学生の多読に適する教材選別の必要という問題が指摘された。ま
た、多読式授業の早い進度に追いつけない学生の出現という問題が見られた。今後、それらの問題を考慮しつつ多
読の視点を重視する学習指導を推進していくことが重要である。