日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: ITL-009
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国際賞受賞講演
思いやりは誰のため?援助行動および援助に対する満足感を予測する非ゼロサム的思考
新谷 優大江 朋子
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抄録

他者が援助を必要としているか不確実な状況では,人は援助の申し出を躊躇する。しかし,援助がほしい人でも,なかなか援助を求められないでいることが多い。援助を求められていない状況で自ら援助を申し出るには,どのような動機づけが必要なのだろうか。本講演では,対人関係において思いやり目標をもつ(他者のウェルビーイングを高めることを目指す)人ほど,不確実な状況においても援助をすること,また,思いやり目標は,自己と他者の利益は表裏一体であるという非ゼロサム的な思考を介して援助を予測することを明らかにした一連の研究を紹介する。研究1では,思いやり目標をもつ人ほど,援助は自己のためにも他者のためにもなると考える傾向が強く,これらの考え方が見知らぬ他者への援助を予測していた。研究2では,思いやり目標をもつ人ほど,友人を助けるためにより長い時間を費やすこと,また,「他者のための時間は自分のための時間であり,自分のための時間は他者のための時間でもある」という非ゼロサム的な時間の捉え方をすることがわかった。研究3では,援助した友人からお節介だと批判された場合でも,非ゼロサム的な時間の捉え方をする人ほど,援助したことに対する満足感が高いことがわかった。一方,他者に時間を提供した,または他者に時間を奪われたと感じる人ほど,満足感は低くなっていた。研究4では,経験サンプリング法を用い,人はある時点で思いやり目標が高まると,非ゼロサム的な時間の捉え方を介して心理的なウェルビーイングが高まることを明らかにした。これらの一連の研究を考察すると,思いやり目標をもつ人は,他者のために時間を使う傾向があるものの,費やした時間は他者のためだけでなく,自分のためでもあると考えるため,援助後に感謝という見返りが得られなくても,援助したことに対する満足感が高く,自己のウェルビーイングも高い。他者が援助を必要としているか不確実な状況でも,他者からの反応や返報を気にせずに援助を申し出るには,思いやり目標と非ゼロサム的な思考が重要であることがわかった。

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