日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
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招待講演
  • 辻 敬一郎, 阿部 恒之
    セッションID: KA-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    心理学と出逢って60余年になる。この間,同学の諸先輩・同僚・院生・学生の皆さん,隣接分野の研究者の方がたとの交流を通じてじつに多くの示唆を得たが,そのなかには論文に直接反映されなかったものの自身の発想や研究展開にとって貴重だった出来事も少なくない。その種のエピソードを想い起し,数年前に拙著『心理学の楽屋話』(私家版)を出した。所属していた教室のティータイムや懇親会の場で興に任せて披露した話をまとめたものだが,それを読んでくださった方から,本大会でそのいくつかを紹介するようお薦めをいただいた。学術大会における話題として相応しい内容と言えるかどうかいささか心許ないが,若手研究者に対するエールの意をこめてお引き受けする次第である。

  • Waikaremoana Waitoki, 鈴木 華子
    セッションID: KA-002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    Indigenous psychologists in Aotearoa New Zealand, Australia and Turtle Island have, for decades, challenged the dominant role of Western-derived psychological knowledge. Unpacking the monocultural paradigm underpinning psychology is necessary if we are to address the health and wellbeing of Indigenous peoples. Despite the proliferation of Western, white-normative psychological theories, the reality for Indigenous peoples is that their standards of health and wellbeing have got worse, not better. Yet Western psychology continues to promote its theoretical traditions as universal, foundational, and applicable to all peoples and situations across the globe. While as Indigenous people we grapple daily with entrenched racism in psychology, many also practice transformative and regenerative methods of wellbeing and healing. Indigenous-informed methods of healing and theories of the nature of being have been in existence since the creation of the universe. I advocate for a psychology curriculum that embeds understanding of settler-colonialism and racism and its role in creating and maintaining intergenerational inequities; psychological practice that enhances rather than appropriates Indigenous knowledge; and importantly, a distinct discipline informed by Indigenous Maaori knowledge to create transformative life pathways. These topics will be discussed in the context of Aoteroa New Zealand and its place in the Pacific - Te Moana-Nui-a-Kiwa.

  • Nattasuda Taephant, 坂井 信之
    セッションID: KA-003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    Thailand experiences increasing mental health concerns. There are limited mental health services. With support from the Thai Health Foundation, an Academic Institute of Mental Health Promotion was developed as a thinktank to promote sustainable mental health promotion policy and innovation. Community-based and less-resource-intensive mental health care will be promoted. Multidisciplinary-approach, research-based, need-based mental health promotion will be delivered via education and training, advocacy, collaboration, and innovation.

    Main operational plans are: 1) to create academic works on mental health promotion via policy proposals, 2) to disseminate academic works on key mental health promotion issues, 3) to disseminate annual Thailand mental health overview report, 4) to establish a mental health innovative center, 5-7) to organize activities to empower mental health innovators, academic networks, and stakeholder networks, 8) to organize relevant public relation activities, 9) to enhance participation from local organizations, 10) to develop a mental network, and 11) to establish online media channels for academic communication.

  • 日本心理学会 研修委員会, Martin Persson, 松本 学
    セッションID: KA-004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    本講演では,可視的差異が与える心理社会的影響について多様な文化的・社会経済的背景を持つ患者の固有のニーズを理解することの重要性を強調しながら,包括的かつグローバルな知見を提供する。社会的規範から逸脱した顕著な身体的差異として定義される可視的差異は,個人の精神的・社会的幸福に大きな影響を与えることがあります。この影響は,しばしば心理的苦痛,社会的不安,生活の質の低下として現れ,社会的状況の回避,自尊心への葛藤,差別やいじめの潜在的体験につながる。本講演では,特に口唇口蓋裂に関連する心理社会的側面に焦点を当てます。

    講義ではまず,可視的差異について概観し,その有病率と,世界中の個人に与える可能性のある深い心理社会的影響について説明します。また,世界的に存在する健康格差に注目し,これらの格差が,特に低資源環境において,可視的差異を持つ人々が直面する心理社会的課題をいかに悪化させるかを強調する。

    さらに講義では,不安,抑うつ,社会不安,回避,QOLを評価するための標準化された尺度の使用など,心理社会的ニーズの評価について掘り下げます。また,外見上の不安を軽減するための社会的支援の役割を強調し,異なる文化や社会経済的背景を持つ患者の包括的な幸福におけるその重要性を強調します。

    講義の最後には,外来診療における心理社会的ニーズに効果的に対応するために革新的な戦略を採用する必要性を強く強調し,潜在的な介入策や戦略を紹介する。このような戦略のひとつがタスクシフティングであるが,これは利用可能な人的資源をより効率的に活用するために,高度な資格を持つ医療従事者から,より短い訓練と少ない資格を持つ医療従事者に,必要に応じて仕事を移すアプローチである。

    この方法は,特に低資源環境における保健医療従事者不足に対する有効な解決策として,世界的に認知されています。専門的な知識を持つ保健師から,地域保健師や訓練されたボランティアなど,より訓練を受けていない人に仕事を再分配することで,より多くの患者さんが必要なケアを受けられるようにすることができます。

    講演では,タスクシフティングに加えて,他の新しいアプローチを模索し,実施することの重要性も強調しています。講演では,これらの革新的な戦略は,単に有益であるだけでなく,可視的差異を持つ人々の心理社会的ニーズに対応するために必要であることを指摘しています。これらのアプローチを医療システムに組み込むことで,包括的で効果的,かつアクセスしやすい心理社会的サポートを,それを必要とするすべての人に提供することができるようになるのです。

特別講演
  • Thema Bryant, Nicky Hayes, Paula Rowntree, Nattasuda Taephant, Waikare ...
    セッションID: SL-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    国際的な結びつきを強めてきた各国の心理学会は,COVID-19で活動停滞を余儀なくされた。しかし,ようやく国境が開かれ,人的交流が活発になってきた。それを記念して,5カ国からVIPをお招きして国際シンポジウムを開催する。このシンポジウムでは,各国の心理学会の歴史や現状を改めて語っていただき,さらに今後の方向性を展望する。このシンポジウムが,国際化の再スタートの狼煙となることを期待する。

  • Thema Bryant, 鈴木 華子
    セッションID: SL-002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    There is a need for all practitioners to be trauma-informed and culturally attuned. This presentation will describe the types, dynamics, and effects of trauma, including the collective, intergenerational trauma. The presenter will explore the needs for these two principles as guideposts in both assessment and treatment, within the frameworks of liberation psychology. Attention to context and acknowledgement of the pervasiveness of interpesonal and collective trauma are required for the provision of ethical care. The dangers of avoidance and minimization of interpersonal trauma and the collective trauma of cultural oppression will be outlined. Barriers to the provision of this care and ways to address these barriers will be described. Self-care and community care for the provider given the realities of vicarious trauma. Finally, the presenter will outline the work of the American Psychological Association in alignment with these priorities.

  • Nicky Hayes, 坂井 信之
    セッションID: SL-003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    Western psychology has changed completely over the past half century. The dominance of the behaviourist tradition in the 1970s, gave way to what became known as the cognitive revolution, responding to the advent of the computer. This changed both statistical analysis and psychological theory: data no longer needed to be analysed manually, using long-suffering research assistants, and psychologists used a computer analogy in theories like Baddeley’s working memory model and the computational model of perception developed by Marr and Nisihara.

    The 1990s saw a growing interest in social psychology. Two integrative theories gained influence throughout Europe: social identity theory developed by Henri Tajfel and social representation theory developed by Serge Moscovici; and in America social psychologist like Philip Zimbardo explored deindividuation and the psychology of torturers. This decade also saw an emerging interest in qualitative methodologies, which became steadily more accepted in the next century. But it was Seligman’s introduction of positive psychology in the year 2000 which really changed Western psychology’s direction, focusing it on positive well-being and flourishing.

    An alternative trend towards critical psychology and deconstructionism identified patriarchal practices and colonial influences on psychological theory; while the practitioner focus was on community and social responsibility. Western psychology nowadays is increasingly pluralistic, reflecting the pluralism of human cultures and sub-cultures, and also the global trend towards developing indigenous psychologies. But under the surface, that diversity is linked by our understanding of the psychological mechanisms and processes which are basic to the human condition.

国際賞受賞講演
  • 松見 淳子, 石川 信一
    セッションID: ITL-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    エビデンスに基づく実践は,世界の多様な文化圏で臨床活動のスタンダードとなっています。主に西洋文化圏で開発された認知行動療法(CBT)は,特定の問題に対する治療効果が証明された介入法として適用されています。一般的に心理療法の実践において,文化はどのように関係し,文化的要因を受け入れるために必要なことは何か。本講演では,科学者-実践者モデルに基づいた心理学的介入研究の進展を概観し,メンタルヘルスのモデルにおける普遍性と特異性の双方を探り,心理学的実践の国際化について検討します。

  • 西田 眞也, 北田 亮
    セッションID: ITL-002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    私はこれまで心理物理学を基本方略として人間の感覚認識情報処理の研究を行ってきた。運動視をはじめ,視覚感覚属性間の相互作用,ものの質感の知覚,時間知覚,マルチモーダル情報の統合やモダリティ間(とくに触覚と視覚)の情報処理の比較,など様々な感覚認知機構を研究テーマとしてきた。人間の認識の研究は脳計測技術や数理モデリング技術の飛躍的進歩により大きく変貌を遂げてきており,心理物理学の相対的なインパクトは下がって来ている。しかし,主観的な知覚を計測する方法は昔と変わらず心理物理学しかない。心理物理学の価値を十分に認識し,方法論を磨いていくことは,心理学関係者の重要な使命である。最近どの分野でもはやっているのがデータ駆動型研究とデジタルツインであろう。前者は従来の仮説検証型と対立するデータを出発点とする研究手法で,仮説検証を後生大事にしてきた結果として再現性問題に苦しんでいる心理学としても無視できない方法論である。ただ,そのためには心理データの規模を飛躍的に増やす必要があり,インターネットを活用した大規模実験などがカギとなる。後者は,実世界のコピーモデルを計算機上に作るという考えである。視覚研究の場合は,画像入力から直接人間の視覚系と一致した出力を直接計算できるような(image-computable)なモデルが視覚系の一つのデジタルツインと言えるだろう。ひとむかし前まではそのようなモデルを作ることは現実的な問題では無かったが,最近は人工神経回路と機械学習の発展により様々なタスクにおいて人間の視覚機能に匹敵する能力を持ったマシンビジョンのモデルができており,それを人間の特性に合わせるという方略が使える。このようなモデルで,過去に報告されてきた多くの心理物理実験のデータや日常場面の知覚すべてを統一的に説明しよう,というのが現在の私の目論見である。このような作業は,過去の心理物理の遺産を未来に継承するための試みであり,human-aligned AIの開発などを通して心理物理学の知を現実社会に還元するための道筋である。

  • 坂田 省吾, 足立 幾磨
    セッションID: ITL-003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    ヒトはどのように時間を計測しているのであろうか?これが研究の出発点である。未解明の疑問ではあるが,その枠組みをある程度は示すことができる。ここで述べる時間弁別行動は1秒から数分の長さの時間認知に関するものである。行動の時間研究においては,その時間の長さから大きく3つに分類されている。1)1秒未満のミリセカンド・タイミング,2)1秒から数時間の長さのインターバル・タイミング,3)約24時間のサーカディアン・タイミングである。ここではラットを用いた実験データを示して,数秒から30秒程度の短いインターバル・タイミングについて行動データを中心に,同時計測した脳波を指標として脳内情報処理との関連で話をする。なお,サーカディアン・タイミングについては2017年10月に「概日時計を調節する分子メカニズムの解明」で米国の3名の研究者にノーベル生理学・医学賞が授与されている。

    時間に興味をもって研究を始めた若い頃は国際心理学会(International Congress of Psychology: ICP)の発表を目標として活動していたがこれは4年に1回の開催なので,2年に1回開催される国際比較心理学会(International Society for Comparative Psychology: ISCP)および,毎年開催される神経科学学会(Society for Neuroscience: SfN)やオーストラリア脳科学会(Australasian Winter Conference on Brain Research: AWCBR)でそれまでの研究成果を発表してきた。時系列的に眺めた発表内容と,国内学会の日本心理学会,日本動物心理学会,日本生理心理学会,日本行動科学学会での発表も含めてこれまでの研究の動向を概観する。2017年からは2,3年に1回の分野横断的に時間研究を中心としたTiming Research Forum (TRF)も国際的に開催されているので紹介する。心の時間は心理学研究の中心的テーマになり得ると考えているので,多くの心理学研究者が時間研究に興味を持って国際的に参入されることを希望する。

  • 柳澤 邦昭, 浦 光博
    セッションID: ITL-004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    社会心理学の多様な研究課題に対し,神経科学のアプローチで迫る社会神経科学は,1990年代中頃から現在に至るまで多くの研究成果を蓄積している。短い歴史の中,脳機能画像の計測技術と解析技術の進歩によって,初期の研究と現在の研究では大きく様変わりしている。なかでも,単変量解析から多変量解析への移行は,脳機能画像データの応用可能性を広げ,社会心理学と神経科学の親和性をより高めている。そこで本講演では,fMRIを用いた脳機能イメージングの単変量解析と多変量解析について概観した上で,講演者が現在行っている研究(e.g., 楽観性と未来思考,職業スティグマ,社会的痛み)を紹介する。最後に,社会神経科学の研究における今後の展開と可能性について議論する。

  • 畑野 快, 杉村 和美
    セッションID: ITL-005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    「青年期はアイデンティティ発達の時期である」。心理学のテキストにはそのように書かれていることが多い。しかしながら,青年期とはいつなのか?本当にアイデンティティは発達するのか?なぜアイデンティティの発達が大事なのか?これらの問いは,答えることが簡単なようで極めて難しい。特に,Eriksonを中心とした理論的な研究は我が国でも盛んに行われてきたが,青年期という比較的長期間のアイデンティティの発達に関する実証的研究は,世界的に見てもほとんどなかった。このような背景から,私の青年期のアイデンティティ発達に関する実証的なエビデンスを蓄積することへの挑戦は始まった。具体的に,国際的に通用する尺度でアイデンティティを測定し,長期縦断データを収集し,それらを統計的に解析することで,日本人青年のアイデンティティ発達の軌跡と主観的well-beingとの共変関係の解明に取組んできた。2016年から2022年にかけて国際誌に公刊された研究からは,オランダやベルギーとは異なった日本人青年の独自のアイデンティティ発達の軌跡と主観的well-beingとの関連を明らかにしてきた。これらの知見を踏まえ,近年では,長期発達だけでなく,日常的な意識,神経科学,行動遺伝学のアプローチを用いて,アイデンティティ発達の実証的研究に取組んでいる。本講演では,これらの研究成果と課題について報告し,フロアの方とアイデンティティ発達の実証的研究の発展可能性について議論したい。

大会企画シンポジウム
  • 日本心理学会 若手の会, 富田 健太, 讃井 知, 井上 和哉, 町田 規憲, 藤井 進也, 竹中 雄大, 中野 卓哉
    セッションID: IS-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    私たちの日常には音楽が当たり前のように存在します。そして,音楽に合わせてダンスをするということも,上手い下手の程度はあれ,多くのヒトが行うことができます。一方で,動物全体に目を向けてみると,多くの動物は音楽に合わせてダンスをすることができません。では,なぜヒトは音楽に合わせたダンスを行えるのでしょうか? ダンスはヒトをヒトたらしめる重要な要素なのでしょうか?講演者の藤井進也はプロのドラマーやダンサーを被験者とした研究,富田健太はヒト以外の動物のダンスそして口笛という観点から,これらの問いに取り組んできました。これまでにもこの領域に関する学会発表やシンポジウムは開かれてきましたが,本シンポジウムではプロのミュージシャンやダンサーをお呼びすることで,現場の視点と研究者の視点を融合させ,本研究領域に新たな洞察を生むことを目指します。

  • 杉森 伸吉, 芳賀 道匡, 袁 麗娜, 上野 弘晶, 島崎 敦也, 福島 勉, 稲葉 陽二, 露口 健司, 堀川 佑惟
    セッションID: IS-002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    少子高齢社会における地域と学校の連携による子どもの新しい教育環境の創出のために,東京都は,TOKYOスクール・コミュニティ・プロジェクトを発足させた。その一環として,東京都で初めてのコミュニティハウス(地域交流拠点)を清瀬市立清瀬中学校の敷地内に令和3年3月に設置した。その目的は,地域住民と学校をゆるやかにつなげ,ひいては地域住民の持つ教育力などのマンパワーを学校の児童生徒や教員に還元するとともに,地域住民も児童生徒や教員,他の地域住民からプラスの影響を受けることにある。

    令和2年から令和4年にかけて,東京学芸大学が東京都からの委託でコミュニティハウスの効果的運営に関する調査研究を行ってきた。具体的には,市内の小中学校の児童生徒と教員,保護者,一般住民に対して,ソーシャル・キャピタルを理論的支柱としたアンケート調査と,関係者に対するインタビュー調査を行ってきた。その結果,QOLの変化や,ソーシャル・キャピタルとQOL,精神的健康,情動知能等との関連など大変興味深い結果が得られた。以上を基に,本シンポジウムでは,地域と学校の協働による新しい教育環境の可能性について検討する。

  • 髙橋 康介, 小島 康生, 島田 将喜, 松浦 直毅, 岡本 依子, 木村 大治
    セッションID: IS-003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    長期フィールドワーカーは1年以上にわたり日常とは全く異なる環境で調査を行い帰路につく。この間,不意に遭遇するさまざまなトラブルに対して現場で対処し,非日常的な環境や人間関係から生まれるストレス,不安,孤独などを解消し,身体的精神的健康を維持する必要がある。高橋,島田はこれまで長期フィールドワーカーを対象とした量的調査とインタビューにより,この困難なタスクを完遂するメンタルスキルについて考察してきた(科研費基盤C「長期フィールドワークを可能とする心理・認知特性とメンタルスキルの解明」,第86回心理学会ポスター発表)。本公募シンポジウムでは研究プロジェクトの総括として心理学者の高橋,小島から調査の内容について報告するとともに,研究協力者でフィールドワーカーの島田,松浦により研究から見えてきたこころの働きについて,自身のフィールドワーク経験を交えて考察を深める。熟練の人類学者でフィールドワークの経験豊富な木村からは人類学の視点で,心理学者でフィールドワークにも関わる岡本からは心理学の視点で,それぞれ論点を提示してもらう。最後の聴衆を交え議論を行う。

  • 日本心理学会 国際委員会, 佐藤 隆夫, サトウ タツヤ, 尾崎 由佳, 鈴木 華子, 家島 明彦
    セッションID: IS-004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    日本心理学会の国際委員会(Committee on International Affairs)は,心理学研究の国際化や国際交流を発展させるための様々な取り組みを行っている。例えば,海外の諸学会との連絡窓口として,覚書(MOU: Memorandum of Understanding)締結学会や国際機関と連携を取り,コロナ禍における諸問題等の国際課題への心理学的貢献に積極的に関わることで,心理学分野における国際連携の強化に取り組んできた。この度,グローバルネットワーク拡充ワーキンググループが新設され,今後ますます海外の心理学会との連携を拡張・充実させていくことになった。そこで,本シンポジウムでは,今後のグローバルネットワーク拡充に向けて,世界の心理学会の動向について概観する。まず,本学会の理事長でもあった佐藤隆夫先生から海外の心理学会の全体像について,また,本学会が海外の心理学会とMOUを締結してきた経緯や今後の展望について,話題提供をしていただく。次に,本学会の機関誌『心理学ワールド』で「心理学史 諸国探訪」の連載を担当しているサトウタツヤ先生から諸外国における心理学の動向について話題提供をしていただく。最後に,フロアの皆様と一緒に今後のグローバルネットワーク拡充のための方策について議論してみたい。

  • 日本心理学会教育研究委員会 心理統計法標準カリキュラム作成小委員会, 三浦 麻子, 高橋 康介, 清水 裕士, 小杉 考司, 森 知晴, 山 ...
    セッションID: IS-005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    学問の世界は日進月歩。私たちは研究者として教育者として,常に知識を更新する必要があります。心理統計という私たちの「道具」にしても同じことです。例えば50年前,25年前,そして今の『心理学研究』誌を手に取って(J-STAGEにアクセスして),ご自身の専門に近いテーマの論文を読んでみてください。用いられている手法も,あるいはその時何が常識とされていたかも,大きく変化していることに気づくでしょう。中堅・ベテランの方々は「心理統計の専門家でもないのに,道具の発達に追いつくのはしんどい」と,若手の方々は「最新の情報を知っていればよく,基礎に目を向ける暇などない」とおっしゃるかもしれません。わかります。しかし,この状況を放置すると,やがて論文が読めなくなり,論文が書けなくなり,研究ができなくなります。そして,論文を読む教育が,書く教育が,そして研究指導ができなくなります。私たちは,私たちが研究者として教育者として,常に知識を更新できるような環境を整えられないか,と考えました。そして,そのためにそれぞれがバラバラに努力するのではなく,それを結集するべく心理学会として頑張ってみよう,という結論に至り,2021年8月に本委員会が発足しました。昨年度大会では,多くの大学で必修科目となるだろう「Basic Statistics(ベシスタ)」シラバス案を提示して,その意図と効用について議論しました。本年度は,この「ベシスタ」シラバス案に沿って作成した汎用の小テストの内容と実施環境をご紹介して,試用してくださった大学からコメントをいただきます。また,「ベシスタ」に塗り重ねる「Standard Statistics(スタスタ)」のカリキュラム構想についてもご紹介します。心理統計あるいはその教育に現に携わっていようがいまいが,ああこれは「じぶんごと」だな,と捉えてくださった方々のご参加を心よりお待ちしております。是非積極的にご意見・ご議論いただければ幸いです。小委員会サイト:https://sites.google.com/view/jpa-psychometrics/

  • 日本心理学会 国際委員会, 佐藤 徹男, 清河 幸子, 河原 純一郎, 春原 桃佳, 陳 冲, 福田 麻莉, 土屋垣内 晶, 松井 大
    セッションID: IS-006
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    海外で研究する事は多くの若手研究者にとって,自身の研究を発展させまた研究者として成長させてくれると考えられる。そして海外で研究することを考えた時の一つの選択肢が海外学振PDである。これまで国際委員会企画シンポジウムでは,若手の海外研究を後押しするために,国際共同研究のはじめ方,コロナ禍での海外ポスドク探し,海外研究を経ての日本国内アカデミア職探しの企画を行ってきた。今年度は,多くの若手にとって敷居が高いと感じられたり,身近に取った人が少ない,海外学振PDに焦点を当てる。シンポジウムの前半は,学振PDとの違いなど海外学振PDの基本的な仕組みについて説明し,その後に教育心理,臨床心理,実験心理の分野で海外学振PDを経験した研究者達に,海外学振PDへのきっかけや取るまでの経緯,海外での研究生活,海外研究室の特色等を話して頂く。後半はスモールグループに分かれて,会場の参加者と共に海外学振PDに関する疑問や悩みを共有するディスカッションを行う。最後に,全体で情報を共有する。このシンポジウムを通して,海外学振PDにより興味を持たれたり,挑戦しようと思える方が増えることを期待している。

  • 鈴木 華子, 植松 晃子, 大山 潤爾, 飯田 敏晴, 鈴木 美枝子, 竹澤 智美
    セッションID: IS-007
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    多様な背景を持つひとりひとりの人権が尊重され,多様な社会的属性や個人的特性を持つ人たちが差別されることなく,苦痛や不利益を被ることなく,安心して活動できるよう,人々が多様性に配慮して行動し,多様性を受容する社会を実現することは重要な社会的課題です。そうした中で,日本心理学会では,2023年3月に「心理学における多様性尊重のガイドライン」初版を発信しました。多様性尊重の方法に正解はないですが,ガイドラインをきっかけとして,より多くの会員がより深く多様性の尊重について考える機会を持ち,今後も多くの会員の手でガイドラインが拡充更新されていくことが期待されています。

    本シンポジウムでは,本ガイドラインの着想のきっかけ,ワーキンググループがどのように進められたか,実際にどのようにガイドラインを反映させられるか,といった話題提供の後,皆様と共にこのガイドラインについてのワークショップを通して,多様性尊重の重要性と考え方について考える機会にしたいと考えています。普段の研究や実践の中で,私たちや皆さまが感じる多様性への思いなども共有しながら,進めていきたいと考えています。

  • 日本心理学会 男女共同参画推進委員会, 森野 美央
    セッションID: IS-008
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    お茶など飲みながら気軽に参加いただくイベントです。イベントでは,職場や学校,ライフイベントに関わる情報交換やTipsのシェアをすることを通じてネットワークづくりをします。参加対象者は女性に限りません。女性でなくても,育児や介護をしていなくても,参加可能です。本イベントに興味がある全ての皆さまのご参加をお待ちしています。

    これまで参加くださった方から,「イベントでの出会いが共同研究に繋がっています!」「定期的なやりとりや研究相談ができる関係性に繋がっています!」など,嬉しいご報告も届くようになりました。第5回という節目の回は,原点回帰のテーマ「研究における繋がりづくり」のもと,より多くの繋がりが生まれることを願い,学会期間中,異なる形態で2回開催します。

    割り当てられた2箇所の時間帯に,①学会会場にて対面で,②zoomを使って遠隔で,2時間程度実施します。①②とも,自己紹介の後,キャリア年数が近い人とお話するセッション,今回のテーマに沿って研究領域が近い人とお話するセッション,という2回のセッション,そして連絡先交換の時間を設定する予定です。②では,グループで出た話について全体共有をする時間があります。

  • 井関 龍太, 望月 正哉, 山根 嵩史, 清水 裕士, 仲嶺 真, 椎名 乾平, 武藤 拓之
    セッションID: IS-009
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    先年,経済学のジャーナルに感情を数値で表現できることを実証したと主張する論文が掲載され(Kaiser & Oswald, 2022),尺度構成に関する心理学等の分野の知識が共有されていないのではないかとウェブ上でちょっとした話題になった。しかし,心理学及び関連分野の研究者であれば尺度構成について十分な知識があると言えるのだろうか。英語圏ではScale Developmentの名を冠するテキストが複数出版されており,それに基づく授業も行われている。対して,本邦では尺度構成に関する専門的な科目を見かけることもない。属人的な経験や慣習によって尺度が扱われ,体系的な教育や方法論的な議論も十分になされていないのではないか。本シンポジウムでは,見逃されがちな尺度構成の基礎をふり返り,その妥当性を支える根拠を問い直し,現実的な運用の中で可能な取り組みについて議論したい。測定論的,科学基礎論的,歴史的アプローチのそれぞれの視点から話題提供を行い,指定討論を通して心理学における測定の対象と方法論について考えたい。

  • 日本心理学会 国際委員会, 毛 新華, 佐藤 徹男, 家島 明彦, 山本 真也, 王 瑋, 春原 桃佳, 林 萍萍, ウィルソン ダンカン
    セッションID: IS-010
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    There is a growing number of international graduate students coming to Japan. However, their resources and information regarding employment after their graduation are very limited. The purpose of this symposium is to a) discuss experiences of former international graduate students who currently work at academia and the situation of a current international graduate student who is in the process of finding employment and b) provide information and support to international graduate students who are concerned about their future employment.

    The symposium will have 2 parts. The first part will welcome 3 former international students who studied in Japan and one Japanese international student who currently studies in Canada. These scholars will talk about a) factors influencing their decisions on staying in the host country or returning to their home country b) their personal experiences of how to find employment. The second part will be a small group discussion where participants will discuss their concerns.

    The symposium will be conducted in English. However, during the small group discussion, we will have both English and Japanese speaking groups.

  • 日本心理学諸学会連合(教育委員会・学術委員会), 岩壁 茂, 辻本 昌弘, 岩立 志津夫, 中村 知靖, 能智 正博, 沢宮 容子
    セッションID: IS-011
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    この四半世紀,心理学の様々な分野で研究倫理についての議論が盛んに行なわれるようになり,倫理綱領や規程も充実してきた。しかし,研究倫理は研究実践との関わりのなかでの倫理であり,実践が変わると研究倫理として意識されるべきことも変わってくる。その意味で研究倫理は,時代とともに問い直され,再考されるべきものである。この10年を考えてみても,研究実践は様々な面で変化してきた。例えばCOVID-19によるパンデミックが心理学研究のテーマや方法等に影響したことは記憶に新しい。関連して急速に広がったオンラインでの調査研究においては,これまでの倫理指針ではカバーできない問題も生じている。また,研究活動を成果発表まで含むとしたら,益々強まる論文発表への圧力のもと個々の研究者が行う,論文執筆や投稿の過程にも精緻な倫理的なまなざしが向けられるようになってきた。本シンポジウムでは,研究倫理に関わって来られた専門の先生方から,心理学の各領域における研究倫理に関する最前線の議論を伺い,ポストコロナ時代とも称されるこれからの時代において理解しておくべき研究倫理について展望したい。

  • 日本心理学会 男女共同参画推進委員会, 山岸 典子, 土肥 伊都子, 高木 綾子, 宇井 美代子, 木下 冨雄
    セッションID: IS-012
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    ダイナミックに変化する現代社会において,仕事のやり方もプライベートの時間の使い方も大きく変化しており,それらをバランス良く生きていくことが,ますます重要になってきている。ストレスや過剰な労働時間により心身ともに疲弊してしまうこともあれば,仕事もプライベートもうまくバランスをとることで,人生の充実度を高め,心身ともに健康的なライフスタイルを維持することもできる。今回のシンポジウムでは,世界的に活躍されているフルート奏者であり,東京藝術大学の准教授である高木綾子氏を迎え,音楽の世界の話をうかがい,ワークライフバランスの重要性と実践的な方法について心理学分野の研究を通して議論を深めていく。キャリア形成も子育ても含めた私生活も,すべて計画的という高木氏の話を具体的に聞き,ワークライフバランスの実践を学ぶ。その上で,話題提供者の宇井美代子氏は,平等感や差別意識などに関するジェンダー研究を例にあげながら,主に働く女性のワークライフバランスに対して心理学的観点からアプローチする。また,指定討論者の木下冨雄氏からは,男女平等に関して,それをどのレベルで論じるのか,また,それが文化や国家の体制,時代によってどう大きく変化してきたかなどについて,大局的な観点からコメントを頂く。本企画では,参加者と講演者との交流の時間を多く取り,仕事やプライベートを大切にしながら,より充実した人生を送るためのアイデアやノウハウを共有することで,参加者が自己実現やワークライフバランスの向上を目指すきっかけとなることを目的とする。

  • 西垣 悦代, 保井 俊之, 山川 修, 佐藤 典子, 田中 芳幸
    セッションID: IS-013
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    COVID-19によるパンデミックの間,大学生の多くは遠隔授業での受講を余儀なくされ,クラブ活動やアルバイトなどにも大きな制約を受けた。それらは大学生の学習意欲のだけでなく,友達づくりやメンタルヘルス全般に様々な影響を与え,コロナ禍から脱しようとする現在も,学生の無気力や目的意識の低下が懸念されている。

    本シンポジウムの企画者・話題提供者らは健康心理学,公共政策,教育工学,キャリア教育の専門家であると共に,ポジティブ心理学を教育に活用して学生の自己成長を促すことに関心を持ち,それぞれの専門の場で実践を続けている。そして,ヴァン・ニューワーバーグ編著『自己成長の鍵を手に入れるポジティブ心理学ガイド』の翻訳・出版企画を通じてこの数年間議論を重ねてきた。

    本シンポジウムでは,学生のモチベーションとウェルビーイングを高める上で,これらがどのように役立っているのか,話題提供者からは理論と実践の両面を紹介したい。また,指定討論者には,大学生のメンタルヘルスおよびポジティブ心理学に造詣の深い田中芳幸先生をお迎えし,研究と実践の架け橋やエビデンスに関しても議論を深めたい。

  • 日本心理学会 若手の会, 讃井 知, 富田 健太
    セッションID: IS-014
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    日本心理学会若手の会では,若手への企画として,例年進路相談会を開催してまいりました。6回目となる今年は,特に研究者としてのキャリアパスを考える方を対象とした企画として,博士課程における悩みの共有や,学位取得にむけたTIPSの紹介を,パネルディスカッション形式で行います。先輩研究者をお呼びし,①研究室の選び方,②指導教員・研究室メンバーとの付き合い方,③学術論文の書き方,④博士課程の公募についてお話しいただきます。

    なお,大会期間中「若手の会ブース」を出展しております。例年グループ形式で実施していた進路相談会につきましては,今年はブースでの個別相談(場合によってはグループでの相談となる可能性があります)を実施いたします。研究,進路,学費や生活費に関すること,就職活動,ワークライフバランス等の内容に関して,様々な領域で活躍する大学院生,若手研究者・教員が相談に応じます。ご都合のよいタイミングでお気軽にブースにお越し頂けましたら幸いです。

    進路に関しては,指導教員や身近な人としか話す機会がないかもしれません。是非,この機会に多様な方々と気軽にお話をし,今後の進路選択の参考にしていただけたら幸いです。

  • 日本心理学会 男女共同参画推進委員会, 森野 美央
    セッションID: IS-015
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    お茶など飲みながら気軽に参加いただくイベントです。イベントでは,職場や学校,ライフイベントに関わる情報交換やTipsのシェアをすることを通じてネットワークづくりをします。参加対象者は女性に限りません。女性でなくても,育児や介護をしていなくても,参加可能です。本イベントに興味がある全ての皆さまのご参加をお待ちしています。

    これまで参加くださった方から,「イベントでの出会いが共同研究に繋がっています!」「定期的なやりとりや研究相談ができる関係性に繋がっています!」など,嬉しいご報告も届くようになりました。第5回という節目の回は,原点回帰のテーマ「研究における繋がりづくり」のもと,より多くの繋がりが生まれることを願い,学会期間中,異なる形態で2回開催します。

    割り当てられた2箇所の時間帯に,①学会会場にて対面で,②zoomを使って遠隔で,2時間程度実施します。①②とも,自己紹介の後,キャリア年数が近い人とお話するセッション,今回のテーマに沿って研究領域が近い人とお話するセッション,という2回のセッション,そして連絡先交換の時間を設定する予定です。②では,グループで出た話について全体共有をする時間があります。

  • 日本心理学会 機関誌等編集委員会 Japanese Psychological Research編集小委員会, 河原 純一郎, 佐藤 德, ...
    セッションID: IS-016
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    日本心理学会機関誌等編集委員会では,2010年に「英語論文投稿への道─入門編─」を開催して以来,12度にわたり 同趣旨の講習会を開いてきました。これまでの講習会も多くの方にご参加頂きご好評を以て迎えられてきました。本年度は,基本に立ち返って,初めて英語論文を書き,投稿する学生さんむけに企画しました。具体的には,論文の然るべき箇所に然るべき内容を書くことを定めた標準フォーマットである,APAのJARS(Journal Article Reporting Standards),AI利用ポリシー,不採択理由の分析からみた投稿準備に焦点をあて議論します。また,事前に受け付けた論文執筆に関する質問・お悩み相談への副編集委員長からの回答も含みます。話題提供者の経験や提言を題材に参加者と議論を深め,これからの時代を担う心理学者の論文作成を後押しする会となれば幸甚です。JPRへの投稿や英語論文執筆一般に関する質問をこちら https://forms.gle/ap32N8y6jZ4FbDkz6 でお受け致します。

  • 日本心理学会 教育研究委員会 高校心理学教育小委員会, 山本 博樹, 北川 恵, 池田 まさみ, 佐藤 誠子, 堀江 竜也, 工藤 与志文, ...
    セッションID: IS-017
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    いよいよ2024年度より,高校公民科「倫理」を中心に,心理学領域(「認知」「感情」「個性」「発達」)が本格導入される(学習指導要領,2018)。学校教育への導入を通し,心理学の知見を社会に還元する大きなチャンスであり,心理学界をあげて尽力すべき重要課題である。このことは,日本学術会議や日本心理学会が主導する公開講座やシンポジウムが増えつつある現況からも明らかである。ちなみに,日本心理学会では「高校生のための心理学講座」が2012年度より継続的に開催され,また2019年第83回大会では「高等学校への心理学教育の導入をめぐって」と題したシンポが開催され盛り上がりをみせ,2022年度の公開シンポに引き継がれていく中で,議論の土台が構築されてきた。そこで,こうした議論の土台のうえに立って,この機会に,高校教育の全般にわたり様々な教科に入り込む心理学教育の全貌をしっかりと捉えた上で,2024年度から本格的に授業が始まる点を見据えて,心理学授業のあり方を考えることが肝要だろう。

    この際には,新学習指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」を見据えて,いかに生徒の学びを支える授業を構築するかが大事になる。ただし,心理学教育ゆえの課題が横たわっている。それは,高校生が保持する素朴心理学(俗説)への対応である。例えば,高校生については,いびつな構造の素朴心理学を持つことが繰り返し指摘されてきた。高校生はこの素朴心理学を信じ切ることで,理解にバイアスがかかると考えられているからである(Bensley, Rainey, Lilienfeld, & Kuehne, 2015)。素朴心理学は幼児期より保持されてきたと考えられるから(Wellman & Gelman, 1998),高校段階でも保持する素朴心理学を信じ切ることで,様々な教科に入り込む心理学の「深い学び」への影響が危惧されるのである。

    そこで,今回のシンポジウムでは,高校教育の様々な教科に入り込む心理学教育の全貌をしっかりと捉え,高校生の素朴心理学をどう克服し,時に学習法に生かしていくかを考えながら,高校生への心理学教育のあり方を考える機会としたい。

  • 檀 一平太, 皆川 泰代, 三原 雅史, 小野 弓絵, 田邊 宏樹, 金沢 創
    セッションID: IS-018
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)は今年で誕生30周年を迎える。この間,脳機能イメージング法としてのfNIRSは方法論的な進化を遂げた。近年Jpn Psychol Res誌で特集号が組まれるなど,実験心理学研究における一般的研究ツールとして普及しつつある。fNIRSの最大の特徴はコンパクトな実験装置と実験参加者への無侵襲性である。このfNIRSの特徴を活かし,近年盛んになりつつあるのが他の実験・計測機器とfNIRSを組み合わせたマルチモーダル計測である。fNIRSを複数台でつなぐハイパースキャニング,fNIRSとEEG,生理心理学的計測機器との同時計測,バーチャルリアリティとの連動など,従来の脳機能イメージング法では困難であった組み合わせが,fNIRSでは「比較的容易に」実現できる。しかし,左記で強調したように実際の運用には様々な方法論的整備が必要となってくる。そこで本シンポジウムではマルチモーダルfNIRS計測の最先端応用とその実現に伴う方法論の紹介を行い,来るべき実験心理学研究への応用可能性を検討する。

  • 日本心理学会 認定心理士の会運営委員会, 平井 啓, 平尾 直靖, 澤井 大樹, 田中 優子, 小俣 貴宣, 渡邊 伸行
    セッションID: IS-019
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    産業・社会における問題には人の心や行動が関連していることが少なくない。そしてそのような問題の解決に向けて,心理学の専門知識や方法論,そしてその考え方やアプローチは有用である。実際,製品開発やマーケティング,あるいは政策決定などにおいて,心理学が実践的に活用されているケースも少なくない。心理学を活用し,優れた問題解決策を創出するために,心理学の知識を効果的に活用できる人材の存在が挙げられる。では,そのような人材を育成するためにはどのような教育が必要だろうか。本シンポジウムでは,そうした人材の育成や教育に携わっている専門家の皆様から,それぞれが取り組んでいる教育活動やその意図,そして成功例や課題についてご紹介頂く。その後,ご紹介頂いた内容を元に意見交換を行い,今後の人材育成に向けた課題や展望について話題提供者それぞれの視点から議論する。具体的には,学術研究における心理学と産業・社会の実践において活用する心理学との違いや,それを踏まえた人材育成・教育の在り方,そして産業・社会の実践にかかわる心理学の専門家が果たす役割や活動の意義について触れていく。心理学にかかわる研究者,実務家,あるいは認定心理士が,心理学の専門知識を産業・社会の問題解決に効果的に活用するために何が必要か考える機会となれば幸いである。

  • 川島 大輔, 古賀 佳樹, 辻本 耐, 赤田 ちづる, 建部 智美, 坂口 幸弘, 渡邉 照美, 近藤(有田) 恵, 浦田 悠
    セッションID: IS-020
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    身近な人との死別は遺された人のその後の人生に大きな影響を及ぼす。とりわけ超高齢多死社会の到来を目前に控え,またCVID-19のパンデミックを経験した現代の人々にとって,死別や喪失とどのように向き合うかは重大な問題である。しかし死別後のグリーフ(悲嘆)についての心理学的研究は,精神医学や看護学などでの検討に比べると十分とは言い難い。また特定の死因や状況に着目した研究や実践が蓄積されてきている一方で,研究者間の相互交流の機会は多くない。加えて,死生の研究や実践に従事していない研究者や一般の人々に対しては,最新の研究成果が十分伝わっていない現状がある。

    こうした現状に鑑み,このシンポジウムでは最新の研究を展開している3名の研究者に登壇していただき,その研究成果を発表してもらう。その上で,2名の指定討論者からのコメントをいただき,それを手がかりとしてさらにディスカッションを行う。本シンポジウムが死別と悲嘆に関する心理学研究をさらに発展させ,また我々のグリーフ・リテラシーを高める機会となることを期待したい。

  • 島津 明人, 中田 光紀, 外山 浩之, 榊原 圭子
    セッションID: IS-021
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    本シンポジウムは,第66回大会から継続して企画されているシンポジウムおよびワークショップ「職場のストレスとメンタルヘルス」の第21回目に相当する。今回のシンポジウムでは,産業保健心理学の国際化を取り上げる。産業保健心理学とは,労働生活の質を高め,労働者の安全・健康・幸福(well-being)の保持・増進のために心理学の知見を適用する心理学の応用領域である。日本では,2012年に本学会の研究会制度を利用した「日本心理学会産業保健心理学研究会」が発足し,年次大会でのシンポジウムのほか著名な外国人研究者の来日に合わせた講演やシンポジウムを企画している。 本シンポジウムでは,研究会が発足して10年を迎えたのを契機に,産業保健心理学に関わる国際動向と今後の国際化に向けた展望について,4名が話題提供を行う。そして,2023年9月に東京で開催される「仕事の心理社会的要因に関する国際学会 Joint Congress of ICOH-WOPS & APA-PFAW 2023」の概要と注目点も紹介する(https://hp3.jp/icoh-wops_apa-pfaw2023/)。

  • 野村 理朗, 小池 光, 田中 美吏, 高橋 英之, 岡田 猛
    セッションID: IS-022
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    「無心」は多様なコンテクストから語られ,その曖昧性と多義性に厚みを持つ。コロナ禍も一服した今,本年度のシンポジウムは「無心」に加えて新たに「いき(九鬼周造)」をコンセプトとして立ち上げ,この両者を映し鏡としつつ「無心」像へと迫りたい。はじめに言語芸術は川柳の“おもろさ”を予測するAIについて,自然言語処理のモデル構築によって得られた最新知見を紹介する。続いて身体性は,伝統芸能の「能」とその熟達化過程について,とくには内受容感覚の観点から「無心」の周縁部へと迫る。また身体競技における「無心」の構成要素について,自己志向性等の個人差を取りあげて考察する。さらには先端技術により自己主体感を人為的に操作すると「無心」に内包されるリスクが露わとなる過程を指し示す。そうして得られた知見を総合し,「無心」に通底するグラデーションを光と影の両側面から描きつつ,ポストコロナ時代を生きる知恵の一端を掴むことができれば幸いである。

  • 公認心理師養成大学教員連絡協議会, 丹野 義彦, 大月 友, 伊藤 大輔, 吉橋 実里, 佐々木 淳, 有光 興記, 嶋田 洋徳, 北村 英 ...
    セッションID: IS-023
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協)は2018年の創設以来,公認心理師に関する多くの問題に取り組んできており,本年は創立5周年を迎える。今回は,公認心理師の養成に関するいろいろな課題のうち,養成において中心的な役割を持っている大学院教育に焦点を当てる。

    本シンポジウムでは,まず,公認心理師制度推進室から「公認心理師の現状と課題」について話題提供をいただく。続いて,修士課程での実践家養成,臨床心理士養成と公認心理師養成,国家試験と修士論文,科学者-実践家モデルと大学院,博士後期課程の公認心理師指導者養成といったテーマで話題提供いただく。最後に,日本心理学会から学術的立場で指定討論をいただき,公認心理師養成の今後のあり方を議論したい。

  • 日本心理学会 若手の会, 前澤 知輝, 工藤 大介
    セッションID: IS-024
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    本企画は,その名の通り学部生と高校生による研究発表動画をまとめ,紹介する企画です。ゼミ研究や卒論の中間発表をはじめ,これから取り組もうとしている研究計画など,心理学に関係する幅広いテーマで数分間のプレゼンテーションをしていただきます。各発表は若手の会幹事による審査の対象となり,優れた発表者をベストプレゼンターとして選出します。

  • 日本心理学会 認定心理士の会運営委員会
    セッションID: IS-025
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    日本心理学会認定心理士が活躍する場は,教育,福祉などの分野のみにとどまらず,実に多様である。社会連携セクションでは「認定心理士として社会で実践していること」をテーマに,認定心理士が日常の生活や業務の中で,心理学を実践している事例や,心理学について考えている/行っている実践・研究内容などを発表する。第四回目は,一般研究発表と同様にポスター発表形式によって実施する。認定心理士と研究者,これから認定心理士の取得を考える学部生などが自由に議論し,意見交換する場としたい。

公募シンポジウム
  • 大久保 智生, 水野 君平, 村中 誠司, 櫃割 仁平, 荒牧 美佐子, 岸 俊行
    セッションID: SS-001
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    現在,大学などの研究機関では研究費の削減が大きな問題となっている。最近では,新たな研究資金の調達方法としてクラウドファンディングに注目が集まっている。クラウドファンディングでは,集まった研究資金を比較的柔軟に使用できる,実施自体が研究のアウトリーチを兼ねているなどといったメリットがある半面,クラウドファンディングを実施すれば勝手に資金が集まるものではなく,資金集めに奔走しなければならないといった問題も存在する。さらに,出資者への説明責任も研究資金を広く集めるという性質上,研究助成金とは桁違いに大きくなるという問題もある。本シンポジウムでは,クラウドファンディングを経験した心理学者に実施に至る経緯やメリットとデメリット,成功のコツなどについて話題提供してもらい,クラウドファンディングによる研究資金の調達を考えている心理学者やクラウドファンディングに関心のある心理学者も交えて議論していきたい。

  • 山本 博樹, 松下 健, 岩壁 茂, 藤本 学, 伊藤 貴昭, 岩滿 優美, 森岡 正芳
    セッションID: SS-002
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    公認心理師の職務には心理的支援の利用者に対する「分かりやすい説明」が含まれている。もとより説明とは「説いて明らかにする」言語活動であり,「理解不振を把握・改善する支援行為」をいうから(山本,2017),公認心理師法より「支援者」と定義される公認心理師においては真正な意味で支援的な説明が求められるのである。彼らにはまさに「分かりやすい説明」が期待されるところである。ところが,一般に説き手は「分かりやすい説明」を受け手に押しつけるため,受け手の理解への支援がなおざりになることが説明研究からたびたび示されてきた。こうした難題を解消するために,今回は受け手に対する「理解確認」に着目し,公認心理師が「分かりやすい説明」を行う際に,受け手の理解確認をすることがいかに重要な役割を果たすかを確認した上で,その理解確認における課題とは何かについて,説明研究と臨床研究を展開してきた専門家が集い,理論と実践の両面からともに議論を重ねたい。

  • 岡 大樹, 松本 昇, 平井 啓, 遠山 朝子, 国里 愛彦
    セッションID: SS-003
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)などに基づく現在の精神障害の診断は症状を基準にカテゴリカルに分類される。しかし,診断基準内の症状の重複の存在,患者ごとの問題の多様性が無視されうるなど多数の問題を抱えている。本シンポジウムでは従来の精神障害の診断分類,さらには精神医学や臨床心理学の枠組みに囚われず,神経科学や実験・認知心理学の知見も含めた,多元的・包括的なアプローチによる精神障害の捉え方について紹介し,新たな考え方や次のアプローチについて議論する。たとえば,症状や認知などのそれぞれの関連性を捉えるネットワークアプローチ,p factor, HiToPなどの因子・階層的次元アプローチ,診断横断的な治療的関わりなどについて紹介する。また,計算論的アプローチや神経生物学的特徴と症状を結び付けたRDoCなどの取り組みも紹介し,議論する。これらの研究や取り組みをもとに,現状の精神障害を取り巻く問題に対して,心理学がどのような役割を果たせるのかについて模索したい。

  • 渋井 進, 森 一将, 市村 賢士郎, 高木 幸子, 澤田 奈々実, 渡邊 伸行, 大江 朋子, 北崎 充晃
    セッションID: SS-004
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    2002年の政策評価法の施行から20年余りが経ち,多分野において評価を通じた改善活動の流れが定着し,社会的重要性が増している。大学においても認証評価や国立大学法人評価が実施されている。一方で,評価の負の側面とも言える「評価疲れ」についても,評価導入時から現在まで聞かれている。しかし,「評価疲れ」は漠然とした評価に対する負担感,不信感,徒労感等を表す抽象的な用語として用いられ,その定義や発現のメカニズムについては検討がなされて来なかった。政策の検証という点では行政学の問題でもあるが,キャンベルの法則に代表される,測定評価が自己目的化を指向する現象は心理測定の問題として,他者からの否定的な評価を恐れる傾向である評価懸念については,社会・教育心理学の問題として報告されている。また,この問題に直面している評価室・IR室等には心理学者も多く所属している。本シンポジウムでは「評価疲れ」と関連してなされている心理学的研究として,大学経営の心理(森),測定尺度の開発(市村),面接評価(高木,澤田)を紹介し,克服へ向け心理学の立場からどのような提言ができるか討論を通じて考えたい。

  • 大久保 圭介, 梅村 比丘, 福田 佳織, 北川 恵, 坂上 裕子
    セッションID: SS-005
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    本シンポジウムは,乳幼児を対象とした最近の日本のアタッチメント研究について報告することで,日本人を対象としてアタッチメント研究を行うことの意義とその課題について改めて考え,この分野の今後の研究の道標を示すことを目指す。話題提供では,まず,乳幼児のアタッチメントタイプを評定するStrange Situation Procedure(以下,SSPとする)を用いた2つの研究について報告を行う。1つは,比較的新しい日本と韓国のSSPデータを用いて,Ainsworth et al.(1978)が示したアメリカの幼児データとの比較結果を報告する。2つ目に,父子を対象とした現在進行中のSSPのデータを用いて,日本で父子を対象とすることの意義や実験上の課題について報告する。続いて,アタッチメントの安定性を評定するAttachment Q-sort法を用いた研究として,特に観察中の敏感性にまつわる親子の多様な行動的要素に着目し,アタッチメント安定性との関連を検討している研究についての経過報告を行う。以上3つの話題提供を行った後,実践・臨床的な観点から,あるいは乳幼児の発達や観察法という観点から指定討論を行う。

  • 犬塚 美輪, 田中 優子, 藤本 和則, 菊池 聡, 眞嶋 良全
    セッションID: SS-006
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    インターネットには,真偽の不確かな主張が数多く展開されている。フェイクニュースや疑似科学などの誤情報は,説得的に書かれているものも多く,その内容が「正しい」と誤って理解してしまうことも少なくない。誤情報を適切に却下することが必要だが,それは簡単ではなく,誤情報を訂正したあとも誤った信念を持ち続けてしまうこともある。誤情報を正しく却下できるような介入としては,単純な訂正だけでは不十分であり,個人の思考プロセスに効果的に働きかける必要がある。したがって,まずは関連する心理メカニズムを分析し,誤情報を信じる(却下する)プロセスや関連する要因を明らかにすることが必要である。そこで,本シンポジウムではまず,誤情報持続効果を中心に,誤情報の影響力について内外の研究動向について論じる。次に,誤情報に対する他者のコメントの効果,インターネット上の誤情報に対する人間の行動,誤情報への介入について心理プロセスの確率モデルを用いた分析についての研究成果を紹介する。これらの研究知見をもとに,多様な観点から,今後の社会において誤情報が及ぼしうるインパクトや,それに対抗するための介入の可能性について議論する。

  • 山岸 典子, Nawa Norberto Eiji, 島井 哲志, 池田 浩, 大成 弘子
    セッションID: SS-007
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    感謝に関する研究は,ポジティブ心理学の中で重要なテーマの一つとなっている。感謝の感情は,私たちが他者の好意や自然界への恩恵に対し感じる積極的な感情であり,幸福感や生きがいへの良い影響,ストレス軽減など様々なメンタルヘルスの効果が示され始めている。そこで本シンポジウムでは,個人と組織における感謝の研究を紹介し,感謝がウェルビーイングにどう関わるのか,その機序について考え,応用の可能性について考察を深めたい。具体的には,まず島井(関西福祉科学大学)が感謝から見たウェルビーイング研究の概観の発表を行う。次に池田(九州大学)が,組織における感謝の心理的効果の研究について発表し,大成(Interbeing)が,実際の組織における感謝に関わるデータをデータサイエンスの手法で解析した結果を紹介する。Nawa(情報通信研究機構)は,個人の感謝特性とウェルビーイングの各種指標との関係について発表を行い,山岸(立命館大学)は個人の感謝行動による分類とその特徴について発表を行う。最後に,今後の当該研究の方向性について展望する。

  • 西田 裕紀子, 唐澤 真弓, 岩野 卓, 日下 菜穂子, 中原 純
    セッションID: SS-008
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    well-beingは幸福感や満足のいく状態として捉えられることが多い。しかし,well-beingをbeing well(よく存在すること)として考えると,その時々の幸せや満足だけでなく,(様々なチャレンジを伴うとしても)良い人生を送っていると感じるか,生きることに価値を見出しているか,という視点が重要となる。本シンポジウムでは,アメリカの心理学者Ryff, C.D.が生涯にわたる心理的発達や成熟,自己成長に言及する先行理論を集約して提唱したpsychological well-beingに焦点を当てて,その研究の現状と課題を討論する。具体的には,西田と唐澤氏より,縦断疫学調査からpsychological well-beingの加齢変化や健康アウトカムとの関連(日米比較を含む)について,岩野氏よりpsychological well-beingへの介入プログラムの開発について,日下氏より食を通じてwell-being向上を目指す地域実践の試みについて話題提供を行う。その後,中原氏の指定討論,フロアからのコメントを中心に,今後の展開について活発な議論を行いたい。

  • 森口 佑介, 中野 珠実, 佐治 伸郎, 松永 理恵, 北田 亮, 浅野 倫子, 堀井 隆斗
    セッションID: SS-009
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
    会議録・要旨集 フリー

    20世紀後半に乳幼児を対象にした心理学研究は著しく進展し,乳幼児の視線計測などによって,特定の色や形を好むことや,それらを別のものと区別していることを示してきた。だが,乳幼児は言語報告を十分にできないため,彼らの意識的経験の内容やその構造,すなわち,クオリア構造がいかなるものであるのかはほとんど明らかになっていない。定型発達児を対象にした研究はもちろんのこと,自閉スペクトラム症などの非定型発達児を対象にした研究についてもほとんど研究が進展していないのが現状である。そこで,本シンポジウムでは,定型・非定型発達の子どもや成人を対象に,クオリアに関連する知覚現象や感情経験について検討している研究者を招き,クオリアの定型・非定型発達プロセスを検討するための理論や研究手法を議論することを目的とする。

    まず,佐治は,色彩語の習得過程について論じる。次に,松永は音楽スキーマの獲得過程を論じる。北田は触質感の知見を論じる。浅野は共感覚と文字学習の関係を論じる。堀井は感情発達過程の構成的研究について論じる。これらの話題提供を受けたのちに,フロアを交えて,クオリアの定型・非定型発達について議論を行いたい。

  • 松島 公望, 森本 真由美, 河村 従彦, 武田 正文, 河村 諒, 中尾 将大, 西脇 良
    セッションID: SS-010
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    神学・宗学は主として宗教教団における「教え(教義)」を取り扱う学問である。「教え(教義)」は宗教教団における柱であり,中核をなすものであることから,宗教教団にとって神学・宗学は自身の教団を支える根幹的な存在である。それゆえに心理学的に宗教教団を調査・研究を行う場合は神学・宗学をしっかり見据えて取り組む必要がある。しかし,これまでの取り組み,特に日本における研究では個人個人で行われることが多く,神学・宗学と心理学における関係性について真正面から検討し,議論する機会はほぼ皆無であった。また,神学・宗学の領域と心理学の領域はほぼ没交渉となっており,時にネガティブに相手側を見ている場合も少なくなかったように思われる。企画者はこの現状を打開したいと考えている。その打開する「はじめの一歩」が本シンポジウムである。本シンポジウムでは,神学・宗学と心理学をいかに結びつけるか(連携・協働できるのか)を思案し,格闘してきた取り組みについて話題提供[キリスト教(カトリック,プロテスタント),仏教(浄土真宗)]を行う。その上で指定討論を行い,本テーマにおける意義や問題点を洗い出したいと考えている。

  • 纓坂 英子, 永久 ひさ子, 涌井 智子, 山口 麻衣, 馬場 絢子, 滑田 明暢
    セッションID: SS-011
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    本シンポジウムの目的は,介護の担い手について,家族の多様化とジェンダーの視点から議論を深める事である。介護には,生活を支える手段的介護のほかに,高齢者の幸せを支えるための観察と調節という見えない介護がある。例えば在宅介護では,本人のニーズを観察し好みや生活歴などを考慮して外部サービスの選択や調整を行う役割が必要である。施設介護でも,幸せに暮らしているかを観察し,本人に代わってニーズを施設スタッフに伝えるなどの調節が必要である。従来これらは主に娘や妻などの女性によって担われてきた。しかし今日の家族介護は,女性の社会進出とも相まって多様な状況にある。また近年の家族の多様化は,家族や子どもを持たずに介護期を迎える高齢者の増加を意味する。フォーマルケアに限界がある中で,高齢者と介護者のQOLを共に高めるための介護のあり方について検討したい。シンポジウムでは,家族介護の多様化,フォーマルケアの揺らぎとインフォーマルケア,親子介護と親子関係などの話題提供をいただき,息子(男性)と娘(女性)の立場から,さらに自分が被介護者となることを踏まえて,介護の観察と調節を誰が担うのかについて議論を深める。

  • 河野 直子, 野村 信威, 宮前 史子, 扇澤 史子, 長田 久雄
    セッションID: SS-012
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    近年,認知症関連疾患の診断技術の向上や地域連携の広がりにより,認知症の前駆段階から医療機関に繋がることが可能になっている。早期からの介入によって症状進行を抑制し,症状の進行に備えた準備が本人の希望に沿ってできる点を評価する 論調も聞かれるが,逆に治療法やケアが確立していない中での早期診断は当事者にとって心理的負担が大きいとの指摘もなされてきた。昨年末には「MCIノート」が日本老年精神医学会から発行されるなど,当事者が当初に向き合う不安や混乱に対してどのような支援を行うべきかが課題として浮き彫りになっている。本シンポジウムで は,MCIを含む認知症関連疾患の当事者への診断後の支援として認知症の人同士が自らのもの忘れについて語り合うピアサポートの実践の試みについての話題提供を受け,心理士等の対人援助職が認知症関連疾患の当事者と共に語り合う試みの意義やごく早期に診断されて当事者が認知症の告知を受けた場合や診断が付かなかった場合にどのような心理的支援が可能であるかについて議論したい。

  • 菅原 大地, 樫原 潤, 北原 祐理, 山口 慶子, 伊藤 絵美, 杉原 保史
    セッションID: SS-013
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/06/27
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    心理療法をめぐって,「エビデンス」と「個別性」のいずれに重きを置くかで大きな隔たりが生じることがあった。「多くのクライエントの平均値に基づく治療効果の評価」だけでは,効果の個人差や心理療法が奏功するプロセスなど臨床実践者が本当に知りたい「エビデンス」を示すことはできない。このような問題に対して,本シンポジウムでは従来よりも臨床実践に還元しやすい「エビデンス」を示すための革新的なアプローチを紹介する。具体的には,エビデンスのある治療技法をテーラーメイド化するプロセス・ベースド・セラピー(菅原),心を一種の複雑系と捉えて個別性に迫る心理ネットワークアプローチ(樫原),ヒューマニスティック心理学を土台に感情心理学や認知科学等の知見を組み込んだエモーション・フォーカスト・セラピー(山口),自己や他者の心理状態を表象する能力に焦点を当て,その発達を促すメンタライジング・アプローチ(北原)について話題提供する。また認知行動療法(伊藤)と心理療法の統合(杉原)の立場から実践経験を踏まえた指定討論を得ることで,現代的なアプローチと従来の理論との関係性を議論し,臨床実践とのさらなる接続を図る。

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