日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: PC-098
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3.社会・文化
集合知はメタ学習のレベルで発生する
*内藤 碧亀田 達也
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抄録

集合知を支える社会的学習メカニズムの理解はいまだ十分でない。これまでの研究では,集合知の発生原理は,個人によって発見された新知識・イノベーションが集団内に蓄積し,そこから新たなイノベーションが発生するループ過程だと主張されてきた。この仮説は,解くべき課題が一定の場合,蓄積された社会的情報が最良の解に収束していく点で集合知の発生を説明できる。一方,現実世界のように,課題が一定でない場合には,蓄積された社会的情報は情報価を失い,集団が誤った局所解に陥りうるという点で,集合知の発生を説明できない。本研究では,学習者が課題の表層的な変化を超えた上位の法則を帰納的に学習する「メタ学習」の概念を導入し,集合知がメタ学習に生じることで,変化への頑健性が担保される可能性を実験的に検討した。計算論モデルによる分析の結果,ペアで学習した参加者は,個別の課題ごとに情報を蓄積するのと同時に,複数の課題に共通する法則をソロの場合より正確に獲得していたことがわかった。これは,集合知が,個別の課題に有効なイノベーションの蓄積と,複数の課題に有効なメタ学習という2つの社会的学習メカニズムに支えられていることを示す。

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