主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
近年,感情制御の困難が感情認識の低下と連関する可能性が注目されている。しかし,感情認識を行うことがどのように感情制御を促進するかを検討した行動実験の先行研究は少ない。本研究では,研究参加者279名がオンライン実験を行った。オンライン実験では,ネガティブ感情を喚起するシナリオ刺激を研究参加者に提示した。研究参加者のうち半数は刺激によって喚起された自身の感情について,ラベリングを行った(ラベリング条件)。その後,不特定の感情制御を行うよう教示した。残りの半数はラベリングを行わずに感情制御を行った(対照条件)。感情制御の後,自身のネガティブ感情の強度を評価し,認知的再評価等の5つの方略のうち何れを選んだかを報告させた。感情制御後の感情強度を目的変数,感情制御前の感情強度と実験条件のダミー変数を説明変数とした重回帰分析を行なった結果,実験条件は有意に感情制御後の感情強度を説明し(β=.21, t=3.70, p<.001),ラベリング条件は対照条件よりも感情制御の効果が高かった。感情認識は感情制御を促進する可能性が示唆されたが,選択された方略による違いは明確ではなかった。