主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
取調べ可視化を巡っては,単に録画しただけでは被疑者に不利な偏向(Camera Perspective Bias:CPB)が生じることが指摘されている(Lassiter & Irvine, 1986)。また取調べ映像は,自白の任意性判断のために使用され,被告人供述の信用性や犯人性の判断に扱ってはならないとされる。そこで本研究は,取調べ映像による自白の任意性評価と評価対象についての裁判官説示の効果について検討した。1)前科情報の有無,2)映像視聴前の説示の有無,3)異なる撮影焦点の取調べ映像を独立変数とし,各条件の被告人供述と事件への評価を比較した。結果,自白供述へのCPBは追認されなかったが,前科情報が与えられた場合には自白の任意性評価が高くなった(F(1, 115)=4.697, p=.032)。また事件の有罪無罪判断では,説示がある場合に有意に無罪判断が高くなり(χ2=5.831 df=1, p=.016)説示の効果が示された。本研究は,説示によって自白の任意性評価が左右されることはないものの,被告人の将来を決定する評価において説示は効果を示すものであることを示唆する。