主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
お札や硬貨等,日常物体の記憶成績は,毎日よく見ているはずの物であっても優れていないことが知られている(Nickerson, 1979)が,テストのみを繰り返すと記憶成績が向上する記憶高進が示された(林,2018)。本研究では「見慣れていない」日常物体として令和6年まで発行されない新千円札に着目し,これを用いて日常物体に関する記憶高進の検討を行った。大学生7名に予備実験として何も提示せずに自由再生を求めたところ,ほぼ何も描けなかった。そこで,まず新千円札の裏と表の画像を同時にモニタに3分間提示し覚えさせた後,ディストラクター課題として3分間雪だるまの落書きをさせ,新千円札の表と裏との自由再生を3分間3回求めることとした。実験参加者として大学生48名の協力を得て,令和3年1月から2月にかけて個別に実施した。スコアリングは新千円札の20種類の要素別に各5点満点として参加者一人分につき2名の採点者が評定し,分析には2名の平均値を用いた。その結果,新千円札では記憶高進の生起は確認されず(F(2,94)<1),繰り返し学習による意味記憶の形成が記憶高進の生起をもたらす可能性が示唆された。