主催: 日本心理学会第85回大会準備委員会(明星大学)大会長 境敦史
会議名: 日本心理学会第85回大会
回次: 85
開催地: 明星大学
開催日: 2021/09/01 - 2021/09/08
いじめ被害を経験したことによる影響について,その時期や種類による効果の差,またそれらがどの程度長期的に持続するかについて着目した検討は少ない。本研究は大学生211名を対象に,過去のいじめ被害経験(有無,有の場合はその種類・時期・長さ)が個人の自尊感情,ゆるし傾向性に与える影響を検討した。被害経験(あり群/なし群)を独立変数,他者へのゆるし傾向性を従属変数とした一要因参加者間分散分析の結果,叩く,蹴るなどの身体的いじめ被害経験をもつ個人は,そうした被害経験を持たない個人と比べて,他者を許す気持ちをより抱きにくくなる可能性が示された。一方,冷やかしなど言語的いじめ被害経験による他者へのゆるし傾向性の差は認められなかった。音声対話には揮発性という特徴があるがゆえに,音声言語によるいじめは物理的にその痕跡を捉えにくい。一方,身体へのいじめは痛みや傷となって体に残るため,被害者自身がその被害を受けたということをその後も何度も想起しやすくなると考えられる。こうした各攻撃行動の特性とゆるし傾向性の関係が示唆されたと言えよう。その他の従属変数において得られた有用な結果についても発表時に議論予定である。