抄録
経済体系の各部門のエキスパート達によって予測された西暦2000年の技術状態は,われわれの生活にどのような影響を及ぼすのであろうか。本論は,産業連関分析の枠組において,いろいろな技術状態の下で計算された実質賃金と資本収益率のトレード・オフ関係を介析し,新旧の技術交替の是非を問う。その帰結として,技術選択を経済的合理性の追求だけにまかせておけば,医療・教育等の分野で,技術進歩の遅れの生ずる可能性が示唆される。同時にこのような分析は,経済理論上重要なケンブリッジ論争に対して,実証的に1つの解答を与えている。