抄録
不良債権問題や貸し渋りといった金融市場における問題はバブル崩壊後深刻化する一方で,それを解決するすべをなかなか見出せずにいる。その理由として金融市場という複雑な世界を簡単に理解するツールがないからとも考えられる。そこで慶應義塾大学産業研究所では経済全体の資金の流れを鳥瞰する1つの方法として貸借対照表形式の資金循環表を制度部門間の取引表形式に組み替えた金融連関表を提案してきた。これによって資金がどの主体からどの主体に流れているのかを見てとることができる。本稿ではその作表方法を解説するとともに,金融構造をより立体的に把握できるよう,産業連関分析に対応した三角化とレオンチェフ逆行列の分析を行っている。