2005 年 13 巻 3 号 p. 16-28
光ファイバーは将来のわが国産業において極めて重要な位置づけとされるなか,実際どの程度の経済波及効果があるのかを,コブ・ダグラス型生産関数と産業連関表などをモデルとして試算した.結果,直接効果のみを対象とした光ファイバー投資ケースの誘発係数3.93は,一般的な公共インフラ投資や国策で推進されている地上デジタルTV 放送投資に比べてもかなりと高い. また21兆円の投資で562万人,16兆円で同428万人ほどの雇用創出数が期待できることを考慮すると,光ファイバーインフラのわが国産業への寄与が多大であることが改めて確認できた. ところが現段階での光ファイバー整備は民間主体となっており,その整備には限界がある.2005年末にはe-Japan 戦略の総括が行われ,翌年からはポストe-Japan 戦略がスタートする.今のデフレを早急に脱却し,持続的な経済成長と雇用拡大を成し遂げるには,従来の市場競争政策のみに委ねたやり方は再考されるべきであり,国策としての産業政策が同時に求められるところだ.