抄録
カール・ポランニーは,ロビンズ流の経済学の定義に対置して経済学の研究対象を<実体的意味における経済> であるとした.それは,人間の物質的ニーズを充足するために行なわれる,自然とひとびととの交流とひとびとの協働のことをさしたものであった.ポランニーは,それを「過程」あるいは「制度化された過程」と呼ばれる,ある種のグラフとして考察しようとした.国民経済計算が記述の対象としているのも,そのような意味での経済の営みである.本稿では,彼の「過程」概念のひとつの定式化を与えるとともに,それを勘定体系として表現するための条件を考察することを通して国民経済計算の公理化を目指そうとする.