抄録
CO2の大きな排出主体となりつつある家計部門を,産業部門との関連で捉えるため,宮沢による伝統的な家計内生化モデルを環境分析に適用する.産業部門と家計部門を含めた日本経済のCO2総排出集約度は1975年から1990年にかけ改善を続けたが,1990年から1995年では悪化している.その要因は家計所得乗数によるCO2排出が増加したからである.産業別のCO2排出家計所得乗数は,1975年では機械産業などが大きかったが,1990年にかけ全体的に減少する.しかし,1995年にかけては,公務,医療・保険,教育・研究など以前とは異なるサービス関連産業の乗数効果が上昇していた.これらは,いわば「家計活動のサービス化」の進展が家計部門のCO2排出を増加させ,引いては日本経済全体のCO2排出を増加させたといえる現象であろう.