2025 年 32 巻 1 号 p. 1-17
本稿では,2005年,2010年,2015年及び2018年の各時点でのOECD-ICIO表を用いて,織物・アパレル製造業において付加価値誘発額が世界的に見て上位にある中国及び東南アジア諸国に焦点を当て,付加価値平均波及距離(Value-added Propagation Length;VAPL)と付加価値誘発額というグローバル・バリューチェーン(Global Value Chain;GVC)の分析手法から,対象国の織物・アパレル製造業の上流及び下流産業を特定し,それらの産業の分布状況を明らかにした.その結果から,中国の織物・アパレル製造業が生産工程を他国に移転しつつも,その付加価値誘発額から見た国際的な影響力が未だ強いこと,中国やベトナムの織物・アパレル製造業自体の付加価値率が低い一方で,各々の上流・下流産業の付加価値率が高いという産業分布であること,そして東南アジア諸国の織物・アパレル製造業規模拡大とともに,中国の産業にもより多くの付加価値が配分されていることが明らかとなった.