2025 年 32 巻 1 号 p. 26-38
東日本大震災の被災市町村への観光客来訪に伴う経済波及効果の津波被害による損失額,その回復傾向及び各市町村の観光地としての規模や被害の大きさによる違いを考察する.本稿では,2007年から2019年までの各年の宮城県内市町村における日帰り観光客・宿泊客来訪による経済波及効果額を算出し,差分の差分法(DID法)によって分析した.その結果,1市町村・年平均ベースの日帰り観光客の経済波及効果額は79億8,537万円,宿泊客については,有意ではないものの8億9,275万円と推計された.また,日帰り観光客は観光地の規模が大きいほど,宿泊客は津波による被害が大きいほどその来訪に伴う経済波及効果の損失額が大きくなる傾向が明らかとなった.