抄録
1960年から90年の間に,日本の産業の比較慢位とそれを規定する要因は大きく変化した。本稿では,詳細な産業別データにもとづいて比較優位の変化を観察したうえで,その決定図を統計的手法を用いて分析した。このとき産業の比較優位の決定国として,伝統的な要素集約度だけでなく,産業組織的要素や産業政策の効果についても検討をおこなった。その結果,比較優位を持つ産業は,労働集約的なものから物的資本集約的,人的資本集約的,技術集約的なものへと変化してきたこと,下諸制度が製造業の比較優位の向上に貢献してきたこと,日本におけるある時期の産業政策は産業の比較優位の決定に影響を与えたこと,などが確認された。