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Online ISSN : 2436-5858
混同の判断における類似性の程度
佐藤 俊司
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2023 年 76 巻 29 号 p. 213-225

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抄録

 不競法2条1項1号と商標法4条1項15号においては、前者は類似と混同をその要件とする一方、後者はマルチファクター・テストの一要素として類似性の程度を考慮するが、その類否判断はいずれも動的な類否判断がなされる。特に、不競法2条1項1号においてはあくまでも類似が適用の前提となる以上、そこにおける類否判断は、混同が生ずるか否かに重点をおいた、柔軟で動的な類否判断(confusingly similar)が行われることになり、その意味で同じ類否判断であっても、商標法4条1項11号に見られる静的な類否判断とは必ずしも一致することにはならない。

 商標法4条1項11号と15号の判断においては、15号の括弧書きの趣旨を踏まえ、11号に該当する商品・役務と、それ以外の15号に該当する商品・役務とを精緻に分けて判断することによって、一般化できる静的な類否判断と、一般化にはなじまない、混同の一要素としての類似の程度の高低を考慮した動的な混同の判断との区別も可能となり、商標権侵害の場面や不競法適用可能性の場面においても、矛盾した判断もなくなるものと思われる。

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© 2023 日本弁理士会
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