2025 年 78 巻 31 号 p. 33-51
メタバースを中心に、今後3Dオブジェクトなどのコンテンツも、一層取引の対象とされ、流通することが想定される。本テーマに関連して、令和5年に不正競争防止法(以下、「不競法」という。)2条1項3号の規制対象行為に「電気通信回線を通じて提供する」行為を追記する改正が行われ、当該改正にあたっては、事前に産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会にて検討が行われてきた。本稿では、同改正の前提として、そもそも同改正前の不競法2条1項3号において、無体物たる3Dオブジェクトが保護され得たのかについて確認したうえで、今般の法改正や不正競争防止小委員会の検討方針の是非について検討する。そのうえで、今般の法改正等により著作権法における主に権利制限規定(第2章第3節第5款)との関係で緊張が生じないかについて検討を加える。最後に、令和5年法改正等により不競法2条1項3号にて無体物たる3Dオブジェクトが保護されることが明確化されたことによりいかなる問題が生起しうるもしくは引き続き残されているのかについて、検討を加える。