抄録
LiMn2O4の電子密度分布に与えるフーリエ級数打切り誤差の影響を調べた。まず、分子動力学計算を行なって得られた時間依存する原子配列から100psを切り取り、結晶構造因子を求めた。これらを観測値と仮定し、種々の逆空間領域で切り取り、結晶構造の精密化とフーリエ合成ならびに差フーリエ合成を行い、得られた電子密度分布を比較することによって、級数打切り問題を検討した。その結果、sinθ/λ<3.33の全反射から得られた電子密度分布は級数打切りの影響をほぼ免れていることがわかった。また、差電子密度分布はこれよりもさらに狭い範囲(たとえばsinθ/λ<0.80)のデータにおいても定性的にはほぼ正しい分布を与えていた。さらに、放射光を用いてsinθ/λ<1.2の範囲で実測したLiMn2O4の結晶構造因子から求めた差電子密度分布は、級数打切りの影響を免れ、LiやO原子の乱れた分布をほぼ正確に反映していることが確認された。