抄録
Al2O3は高硬度、耐熱性、耐食性といった優れた特性を持つ一方、セラミックス特有の脆さを併せ持つ材料である。脆さという欠点を克服し、高強度と信頼性を実現した材料としてその用途を広げるためには、破壊に対する知見を得ることが不可欠である。多結晶Al2O3に導入した亀裂は結晶粒内と結晶粒界のいずれかを進展することが確認されており、その進展経路は結晶粒の強度や粒界性格の影響を受けると予測される。そこで、本研究では多結晶Al2O3に進展させた亀裂をSEM/EBSP法を用いて観察し、亀裂近傍の結晶方位に着目しながらその進展経路について解析を行なった。その結果、粒内破壊はへき開面の影響を受けることが分かり、また粒界破壊は粒界性格には依存しないことが明らかとなった。