抄録
タングステン酸ビスマス(Bi2WO6、BW)強誘電体は、大きな自発分極値を持つことが知られている.しかし,試料の漏れ電流が大きいため,BWの分極特性はほとんど報告されていない.現在までに我々は,Mn置換により漏れ電流が劇的に低減し,大きな残留分極値50μC/cm2が得られることを報告している.本研究では,電子スピン共鳴によりMnドープBi2WO6単結晶の欠陥構造を評価し,Mnドープ効果について考察した.BWにおける大きなリーク電流は.W5+に由来するキャリア(電子)の注入に起因するとが明らかになった.また,電子スピン共鳴により,高温からの冷却に伴うMnの価数変化が,漏れ電流の抑制に重要であることが示唆された.