抄録
溶融処理を行なったDy123超伝導体は良好な超伝導特性を示すことが報告されているが、テープあるいは線材に加工したDy123超伝導体についての報告は少ない。本研究では溶液紡糸法で作製した繊維状Dy123超伝導体(φ=80-120μm)を酸素濃度が異なる雰囲気ガス中で部分溶融し、雰囲気ガスが試料のJcに及ぼす影響について調べたので報告する。 前駆体繊維はDy:Ba:Cu=1:2:3の組成比となるように計量・混合した金属酢酸塩水溶液に有機酸およびPVA水溶液を加え紡糸ドープを経て、乾式紡糸により作製した。繊維試料は熱分解の後、酸素濃度の異なるArベースの混合ガスを用いて1000-1070℃の温度範囲で系統的に部分溶融熱処理をした。その結果、いずれの雰囲気ガスを用いた場合も試料のJcは104A/cm2以上の高い値を得ることができ、高いJcが得られる溶融温度は、ガス中の酸素濃度が高くなるにつれ、高温側へシフトした。Jcの最大値は雰囲気ガスの種類に依存することなく約2.5×104A/cm2であった。高いJcを持つこれらの試料は緻密な組織であり、Dy123組織中にDy211が微細分散している様子が観察された。