抄録
精密機械加工や電子顕微鏡分野において、現在のレベル以上の微細な制御や観察をするための阻害要因として、系内の構造材料に生ずる振動が考えられる。この問題の解決には、構造材料自体に優れたダンピング特性を持たせることが有効である。構造材料に用いられるような剛性の高い材料でかつダンピング特性の高い材料としては、制振合金や制振鋼板等があるが、高い製造技術を要する・形状に制限がある等の問題点があるため、我々は製作が簡便で形状の自由度が大きい材料を目指して、セラミックス多孔体を基材として高分子を含浸・複合化させる手法での材料開発を進めている。Al2TiO5-MgTi2O5固溶体系セラミックスのダンピング性を高め、高分子と複合化することで、ヤング率50から60GPa、内部摩擦0.01から0.03と、剛性・ダンピング共に併せ持つ材料を開発したきた。振動減衰材料として用いる際の最適な周波数領域を調べるため複合材料の内部摩擦の周波数依存性を動的粘弾性測定で評価した結果、複合材料は1Hz以下の低周波領域で内部摩擦ピークを持つ材料であることがわかった。