抄録
アルミナ(α-Al2O3)は、生体内で安定であり、耐摩耗性に優れるため、整形外科や歯科分野におけるインプラント材料や人工股関節の摺動面に用いられている。人工関節の摺動面にAl2O3を用いるには、同Al2O3には耐摩耗性の他に、高耐食性や表面平坦性等が要求される。一方、酸素クラスターイオンビーム援用蒸着法では、数個から数千個の酸素分子の塊状集団をイオン化し、イオンビームとして基板に援用照射することで、蒸着に最適な低エネルギーで大容量の酸素分子を供給することが可能となる。このため低基板温度で高品質で平坦な酸化物薄膜の作製が可能となる。また、クラスターイオンビームの運動エネルギーを制御することによって結晶構造の制御も可能となる。そこで、本研究では、種々の条件で様々な基板にAl2O3薄膜を形成させ、その構造および特性を調べた。