抄録
電荷の異なる物質を静電相互作用を利用して交互に堆積させる交互積層(LBL)法は、ナノメートルオーダーで均一な多層膜の作製法として知られている。我々はLBL法によりプロトン伝導体超薄膜を積層した新規電解質膜の作製とその燃料電池への応用について検討を行っている。これまでに、ゾル-ゲル法によって作製したフェニルシルセスキオキサン(PhSiO3/2)粒子の表面をLBL法によりプロトン伝導体で修飾し、その後加圧によって粒子を圧着することで、粒子界面にプロトン伝導体が濃縮された電解質膜の作製と燃料電池特性などについて報告してきた[1]。LBL法によってもたらされる積層膜構造を制御することができれば、超薄膜化による大幅な伝導体使用量の削減などが期待される。本研究ではプロトン伝導体として全フッ化スルホン酸高分子(Nafion)を用いて積層膜を作製し、LBL条件とNafionの積層量およびそのプロトン伝導性との関係について検討を行った。