抄録
結晶性の粉末試料において結晶粒径の大きさが広い分布を持つ場合に,粉末回折ピーク図形にピーク頂上付近が尖鋭であるとともに長い裾を引く形状が観測される場合がある。このような回折ピーク形状について最近理論的なモデル化が進展し,分布の広がりが大きい場合に形状が尖鋭になる傾向を示すことが理論的にも明らかとなっている。また,モデルピーク形状関数を実測ピーク形状にあてはめることにより,平均的な結晶粒径だけでなく粒径の統計的な分布を評価することのできる方法が提案されている。本研究では回折ピーク形状の尖り具合の尺度となりうる新しいパラメータを定義し,従来用いられてきた尖りパラメータと比較する。さらに近似的な関数モデルを用いたフィッティング計算により簡便に粒径を評価する方法について検討する。