抄録
温度低下に従って発色する過程を、透視型焼成炉でその場観察した辰砂釉(還元焼成)について、シンクロトロン放射光を用いて、EXAFS解析を行った。この釉中には、分相したガラス相の中に、直径が数十nmの銅の微小結晶が分散していることが、透過型電子顕微鏡により確認されている。この結晶は電子線回折の観察により金属状態であることが推定されていたが、今回のEXAFS解析の結果からも金属銅であることが示された。また、同じ調合組成の釉薬を酸化焼成した試料の電子顕微鏡観察の結果は、還元焼成の場合とは異なり、ガラス相は分相しておらず、焼成雰囲気が釉のガラス構造に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。