抄録
セラミックスの湿式成形プロセスにおいて、原料粉末は溶媒や分散剤と混合され、その後機械的なエネルギーによる解砕によって、分散したスラリーとなる。スラリー作製には主にボールミルプロセスが用いられるが、調整したスラリー中の粒子が再凝集するなど、そのスラリー特性に問題が生じる場合が多々ある。これはボールミル時の過剰な衝突・解砕エネルギーによって、粒子の表面状態や分散剤の吸着特性などに変化が生じるためと考えられる。複雑成形可能な鋳込み成形で用いるスラリーに求められる特性は、(1)低粘度、(2)良分散、(3)高粉体含有量、等であるが、ボールミルプロセスで安定な高粉体含有スラリーを調整することは、現状難しい。これまで我々は解砕エネルギーの小さな湿式ジェットミルプロセスを用いる事で、低粘度且つ高粉体含有量の分散スラリーの作製に成功し、そのスラリーは成形時に粒子を高充填できる(高密度成形体)ことを示した。本報告では、ボールミル及び湿式ジェットミル後のアルミナ粒子の表面状態を昇温脱離質量分析(TPDMS)法及び、拡散反射フーリエ赤外分光(DRIFT)法により評価し、解砕工程が及ぼす特性及びスラリー特性への影響について報告する。