抄録
バルクセラミックスや単結晶では、相転移等に伴う強誘電特性の変化は基本的に結晶構造およびその配向性を反映するが、薄膜では一般的に基板に拘束されるため、製膜温度から室温までの冷却過程で熱膨張率差に起因する応力が発生し、強誘電体の結晶配向性はバルクに比べて複雑に変化する。本研究では、熱膨張率の異なるSiおよびYSZ基板上に複数の酸化物薄膜をバッファー層(MgO、TiO2)として導入することで異なる配向をもった下部電極SrRuO3 (SRO)を作成し、その上に(001)、(101)および(111)に配向させた強誘電体Pb(Zr,Ti)O3 (PZT)薄膜を作成することで、薄膜に与える熱膨張率差による応力の影響、および同等の熱膨張下での強誘電特性の方位依存性を検討した。