抄録
チタン酸リチウム(Li2TiO3)は、国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor, ITER)計画におけるテストブランケットモジュール(Test Blanket Module, TBM)に装荷する、核融合炉の燃料となるトリチウムを生産(増殖)する材料として最も有望な材料である。トリチウムを回収するためのスウィープガス中に水素を添加することで、生成したトリチウムを増殖材料表面から容易に除去することが可能となる。しかしながら、水素添加スウィープガス中でLi2TiO3は質量減少が生ずる。これは、T4+がTi3+に還元され電荷補償により生ずる酸素欠損によると考えられる。星野らは、アルコキシド法やLiOH・H2OとH2TiO3とを原料とした方法で合成したLi2TiO3とLi4TiO4</UB>との二相混合物やLi過剰添加によるLi2+xTiO3+y(x、y>0)が水素添加スウィープガス中でも化学的に安定であることを報告した。
本研究では、LiOH・H2OとH2TiO3とを原料とするチタン酸リチウムの合成法を詳細に検討し、Li過剰添加によるLi2+xTiO3+y(x、y>0)の単一相の合成を試み、焼成時の雰囲気および温度などのLi2+xTiO3+y(x、y>0)の結晶化、結晶水脱離、あるいはLi蒸発などへの影響を解明した。Li2+xTiO3+y(x、y>0)中のLi/Ti比は発光分光分析(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy、ICP-AES)で確認した。その結果、従来のチタン酸リチウム合成法であるLi2CO2粉末とTiO2粉末を用いる固相反応法では試料の融解が生じて合成できなかったLi2+xTiO3+y(x、y>0)を合成することができた。結晶構造はX線回折(Cu-Ka)により分析した。