抄録
近年、水素クリーンエネルギー社会の実現や、揮発性有機溶媒(VOC)による環境汚染などの観点から、ガスセンサーの重要性は増大しつつある。半導体式ガスセンサーでは、雰囲気によって酸化スズや酸化亜鉛などの半導体酸化物の電気抵抗が変化することを利用してガスを検知している。本研究では、材料学的な視点から酸化スズや酸化亜鉛などの半導体酸化物表面で起こっている反応過程を解明することを目的としている。 試験ガスとして0.5%水素-空気と0.5%水素-窒素を比較した場合、センサー応答に違いが見られた。0.5%水素-空気に対しては比較的立ち上がりが早いのに対し、0.5%水素-窒素では急激な立ち上がりの後緩やかに上昇を示した。空気における吸収スペクトルと比較すると、酸化スズ膜では0.5%水素-窒素のときは300~500 nmの領域で吸収の増大が見られたが、0.5%水素-空気ではスペクトルに顕著な違いが見られなかった。水素-窒素系で見られる可視短波長領域の吸収は酸素空孔の生成によるものであると考えられる一方、Hall効果測定からはこの酸素空孔はキャリア増大に寄与しないことが示唆された。