抄録
新家が開発したTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金(以下TNTZ合金)は、為害性ある元素を含まず、低弾性率を示し、Ti-6Al-4V合金と同等の機械的強度を示すといわれている。しかし、この合金は、チタン金属に生体活性を付与する方法として知られるアルカリ-加熱処理によっては、擬似体液(SBF)中でアパタイトを形成するようにはならない。本研究は、同合金に高い生体活性を付与する新しい化学処理法を開発することを目的とする。TNTZ合金をNaOH水溶液で処理した後、CaCl2水溶液で処理すると、その表面にはCaが導入される。これを700℃で加熱すると、表面層の引っかき抵抗が著しく向上したが、擬似体液(SBF)中でのアパタイト形成は認められなかった。しかし、これを温水で処理すると、SBF浸漬3日以内にその表面にアパタイトを形成した。このことから同処理を施したTNTZ合金は、生体内でも同様に高いアパタイト形成能を発現する有用な生体活性インプラント材料になると期待できる。