抄録
4 μm帯レーザーは赤外分光分析用光源への応用が期待される。我々は以前の研究において、Ga2S3-GeS2-Sb2S3ガラス中のEr3+より4.3 μm蛍光(4I9/2→4I11/2)を観察している。しかし、4I9/2は4I11/2よりも蛍光寿命が短い上に、Er3+間エネルギー移動による濃度消光も深刻で、反転分布形成が困難であることが分かった。このことから本研究では、4.3 μm蛍光の終準位である4I11/2の寿命を減少させるためYb3+を共添加した。その結果、4I11/2の蛍光寿命が急激に減少し、同時に4I11/2からの蛍光が消光した。これはEr3+-Yb3+間エネルギー移動{Er3+: 4I11/2, Yb3+: 2F5/2→Er3+: 4I15/2, Yb3+: 2F7/2}により、4I11/2にあるEr3+が緩和されたためと考えられる。これにより、Er3+の4I11/2の蛍光寿命が4I9/2よりも短くなり、4.3 μm蛍光の光増幅が大幅に促進されることが期待される。