抄録
バイオミネラルが持つ複雑かつ精密な三次元ナノ構造を機能性酸化物へ応用することで優れた特性の発現が期待される。これまでの研究で、寒天ゲルを反応場として結晶成長を制御し、バイオミネラル類似の配向ナノ結晶の集積構造をもつMnCO3結晶を中間体としてLiMn2O4多孔質体の合成が可能であることがわかった。ここでは、水熱反応を利用することで多孔性を維持したスピネル型LiMn2O4作製を試みた。8 wt%の寒天ゲル中で成長させたMnCO3結晶は、300 nm程度の菱面体ユニットが方位を揃えて集積し、マクロには単結晶のように菱面体構造をとっていた。比表面積は52.3 m2/gと大きい。さらに、これを仮焼し水熱反応させることにより得られたLiMn2O4は、20-50 nm程度の配向した粒子から構成されており、比表面積は28.8 m2/gと大きく、水熱法がナノ構造の維持に有効である事が示された。