抄録
手術の際に骨からの多量の出血を抑制する材料として,ミツロウを主成分とする粘土状の止血剤が使用されている。しかしながら,この止血剤は生体親和性に乏しいため,骨同士の接着を抑制するなどの問題が指摘されている。演者らは,エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(EPO)を使用して,接着作用と止血作用を有する新規骨止血剤の調製条件を検討している。本研究では,EPOに対して,(i) 再石灰化作用を有するリン酸化オリゴ糖カルシウム(COP)や,(ii) COPを水熱調製して得た水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2; HAp)をそれぞれ複合化し,生体親和性を有する新規骨止血剤の作製条件を調べるとともに,この複合材料からの薬剤徐放特性を検討した。