抄録
フラーレン(C60)はグラファイトとダイヤモンドに次ぐ第三の炭素同素体であり、十二個の五員環と二十個の六員環から構成される。1.9 eV程度のHOMO-LUMOギャップを有しており、有機材料としては唯一使用できるn型有機半導体分子であるため、有機薄膜太陽電池のpn接合材料として使用されている。一方で、三重に縮重したLUMO軌道からC60はさらに六つまでの電子を付加できるため、非常に優れた電子受容体として期待される。我々は、フラーレンを電子受容体として用いることにより電荷分離効率を向上させることができないかと考え、ルチル型酸化チタン(TiO2)とフラーレンの複合体を合成したところ、可視光下で優れた光触媒活性を発現することを見出した。しかしながら、その発現メカニズムについては不明であった。そこで本研究では、紫外光または可視光下における酸化・還元サイトを調査することで、光励起された電子の動きを間接的に捉え、可視光応答するメカニズムを提案することを目的とした。