抄録
電気化学的変化を示す酵素や色素等の分子触媒を固定可能で、高い導電性と比表面積を示す酸化チタンを表面に形成させたチタン金属は、水の電気分解装置、燃料電池、太陽電池等の電極材料に有用である。本研究では、チタン金属を化学処理後、窒素雰囲気中600~1000℃で加熱処理する方法により、上記特性を有する電極の作製を試み、加熱処理がナノ構造と導電性に及ぼす影響を調べた。その結果、化学処理後に表面にナノ構造が形成され、800℃以下の加熱処理では形状が維持された。化学処理によりチタン酸が、加熱処理により窒化チタンと酸素欠陥型酸化チタンが形成された。酸素は表面から内部に向け減少し、窒素は深さ0.15µm付近で極大を示した。導電率は加熱温度の上昇とともに増大した。得られたチタン電極は、リン酸末端を有するフェロセン分子を化学的に固定でき、電気化学的に酸化還元反応を示した。