抄録
コロナ禍により、テレワークの導入等からPC、スマートフォンの更なる長時間利用が原因でドライアイ症状(眼精疲労や目の渇き等)の解消に処方薬と一般用医薬品(OTC薬)の点眼薬を併用する患者が増える懸念がある。現在、VDT(Visual display terminal)作業の長時間化や点眼薬の服薬指導とOTC薬の使用実態及び併用例との関係を実証した研究はない。そこで、点眼薬でドライアイを治療中の20~39歳の患者800人を対象に、点眼薬の使用実態の調査を行った。ドライアイ治療を「OTC薬のみの治療群」「処方薬のみの治療群」「OTC薬と処方薬の併用群」の3群に分類し、有意差検定及び多項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、「コンタクトレンズの装着」、「1日平均VDT作業時間が長い」「点眼薬の正しい使い方について医療従事者による指導を受けたことがない」「ドライアイ罹患期間が長い」「点眼薬の正しい使い方について医療従事者に質問したことがある」の因子が処方薬とOTC薬の併用に関係した。一方、OTC薬の使用者のなかには受診勧奨を積極的に実施すべき患者が隠れている可能性があり、ドライアイの罹患期間と治療歴の聴取は薬剤師によるトリアージに有用な情報となると示唆された。